[2016-10-29-1]の記事に引き続き,標準化 (standardisation) の過程に認められる4段階について,Haugen を参照する.標準化は,時系列に (1) Selection, (2) Codification, (3) Elaboration, (4) Acceptance の順で進行するとされるが,この4つの過程と順序は,社会と言語,および形式と機能という2つの軸で整理することができる (下図は Haugen 933 をもとに作成).
| Form | | Function |
Society | (1) Selection | | (4) Acceptance |
| ↓ | | ↑ |
Language | (2) Codification | → | (3) Elaboration |
まずは,規範となる変種を選択 (Selection) することから始まる.ここでは,社会的に威信ある優勢な変種がすでに存在しているのであれば,それを選択することになるだろうし,そうでなければ既存の変種を混合するなり,新たに策定するなどして,標準変種の候補を作った上で,それを選択することになろう.
第2段階は成文化 (Codification) であり,典型的には,選択された言語変種に関する辞書と文法書を編むことに相当する.標準的となる語彙項目や文法項目を具体的に定め,それを成文化して公開する段階である.ここでは,"minimum variation in form" が目指されることになる.
第3段階の精巧化 (Elaboration) においては,その変種が社会の様々な場面,すなわち使用域 (
register) や文体 (
style) で用いられるよう,諸策が講じられる.ここでは,"maximum variation in function" が目指されることになる.
最後の受容 (Acceptance) の段階では,定められた変種が社会に広く受け入れられ,使用者数が増加する.これにより,標準化の全過程が終了する.
社会・言語,および形式・機能という2つの軸からなるマトリックスにより,標準化の4段階が体系としても時系列としてもきれいに整理されてしまうのが見事である.この見事さもあって,Haugen の理論は,現在に至るまで標準化の議論の土台を提供している.
・ Haugen, Einar. "Dialect, Language, Nation."
American Anthropologist. 68 (1966): 922--35.
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