昨日の記事[2010-04-09-1]に続く話題.BNC Word Frequency List の6318語の見出し語化された ( lemmatised ) 最頻語リストを材料として,音節数の分布がどのようになっているかを調査してみた.
まずはリストを頻度順に眺めてみるだけで,ある程度の検討はついた.[2010-03-02-1]の記事「現代英語の基本語彙100語の起源と割合」からも明らかなとおり,最頻基本語にはゲルマン系の本来語が多い.このことは,単音節語が多いということにもつながる.しかし,リストを下って頻度のより低い語に目をやると,徐々に2音節語,3音節語が目につくようになってくる.したがって,頻度で上位どのくらいまでを対象にするかによって,音節数の相対的な分布は変わってくることが予想される.そこで,まず6318語すべての音節数を出した上で,最頻100語,200語,500語,1000語,2000語,3000語,4000語,5000語,6000語というレベルで音節数の分布を調査した.レベル間の比較が可能となるようにグラフ化したのが下図である.(数値データはこのページのHTMLソースを参照.)
このグラフからいくつかの興味深い事実を読み取ることができる.
・ どのレベルでも単音節語が最も多い
・ 対象語彙が大きくなればなるほど,2音節語数が単音節語数に肉薄する
・ 英語語彙の圧倒的多数が単音節語か2音節語である
・ 対象語彙が大きくなればなるほど,平均音節数が漸増する
・ いずれにせよ英単語の平均音節数はせいぜい2音節ほどである
今回は最頻約6000語レベルの語彙で調査したが,対象語彙をどんどん大きくしてゆくとどのような結果が出るのか,おおいに気になった.やがては2音節語が単音節語を追い抜き,平均音節数も漸増を続けるのだろうか? あるいは平均音節数がこれ以上は変わらないという限界点が存在するのだろうか? non-lemmatised な語彙リストを材料にすると平均音節数はどのくらい変化するのだろうか? 次々に疑問が生じた.
ちなみに,最頻5000語レベルで初めて現れる7音節語が一つある.英語の平均音節数からすると異常に長い超多音節語だが,比較的よくお目にかかる単語ということになる.何であるか,想像できるだろうか? 答えは,4657番目に現れる
telecommunication
(←クリック)である.なるほど?.
今回は,昨日の記事[2010-04-10-1]で扱った音節数に関するデータを,角度を変えて見てみたい.100語レベルから6000語レベルまでの各頻度レベルの数値を標準化して,単音節語から7音節音語までの相対頻度を比べられるようにしたものである.(数値データはこのページのHTMLソースを参照.)
昨日のグラフだけでは読み取りにくかったいくつかのポイントが見えてきた.
・ 対象語彙が大きくなればなるほど単音節語の比率は減少するが,1000語レベル以上からの減り幅は比較的小さい
・ 2音節語の比率は,1000語レベル以上ではほとんど変化していない
・ 500語レベル以上からは3音節語と4音節語が存在感を増してくる
・ とはいえ,2000語レベル以上からは相対的な分布の変化は小さく,全体として安定しつつあるように見える
昨日の記事[2010-04-16-1]で触れたように,COLT ベースの音節数分布調査をパイロット・スタディとして実施してみた.以下が結果.[2010-04-10-1], [2010-04-11-1]の BNC ベースの調査結果と比較するにはこちらのページへ.
BNC ベースの結果と比べて,100語,200語,500語,1000語(976語)のいずれのレベルでも,COLT のほうが平均音節数は少ない.1000語(976語)レベルで比べると,COLT は単音節語と二音節語だけで93%をカバーしているが,BNC はそのカバー率は約10%ほど少ない.口語コーパスに限定した COLT とそうでない BNC の差が関与していると考えられる.