ことわざは,その言語文化で伝統的に受け入れられてきた生活の知恵であるから,そこにその文化独自の物事の見方やとらえ方が反映しているというのは,確かにありそうなことである.典型的な種類のことわざを言語ごとに比較してみれば,おもしろい差異の洞察が得られるにちがいない.
安藤の第8章に,日英語(東西)ことわざ比較の議論がある.『東西ことわざもの知り百科』(春秋社,2012年)に依拠しつつ,例が挙げられていたが,主たるものを以下に引用しよう.
英語 | 日本語 | |
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[多弁型] Don't beat about the bush. Call a spade a spade. | ←→ | [寡黙型]口は災の元.秘すれば花. |
[行動型] Do to others as you would be done by. (『マタイ伝』『ルカ伝』) | ←→ | [慎重型]己の欲せざる所を人に施すこと勿れ.(『論語』) |
[攻撃型] Offense is the best defense. | ←→ | [守勢型]和をもって尊しとなす.(聖徳太子) |
[経験主義] Experience without learning is better than learning without experience. | ←→ | [権威主義]学若し成らずんば死すとも帰らず.温故知新. |
[個人主義] Who spits against heaven, it falls in his face. | ←→ | [集団主義]一蓮托生.親の因果が子に報い. |
[罪を意識] Religion is the rule of life. | ←→ | [世間を意識]生きて虜囚の恥かしめを受けず.忠臣は二君に仕えず. |
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