hellog〜英語史ブログ

#3426. 日英語(東西)ことわざ比較[proverb][japanese]

2018-09-13

 ことわざは,その言語文化で伝統的に受け入れられてきた生活の知恵であるから,そこにその文化独自の物事の見方やとらえ方が反映しているというのは,確かにありそうなことである.典型的な種類のことわざを言語ごとに比較してみれば,おもしろい差異の洞察が得られるにちがいない.
 安藤の第8章に,日英語(東西)ことわざ比較の議論がある.『東西ことわざもの知り百科』(春秋社,2012年)に依拠しつつ,例が挙げられていたが,主たるものを以下に引用しよう.

英語 日本語
[多弁型] Don't beat about the bush. Call a spade a spade. ←→ [寡黙型]口は災の元.秘すれば花.
[行動型] Do to others as you would be done by. (『マタイ伝』『ルカ伝』) ←→ [慎重型]己の欲せざる所を人に施すこと勿れ.(『論語』)
[攻撃型] Offense is the best defense. ←→ [守勢型]和をもって尊しとなす.(聖徳太子)
[経験主義] Experience without learning is better than learning without experience. ←→ [権威主義]学若し成らずんば死すとも帰らず.温故知新.
[個人主義] Who spits against heaven, it falls in his face. ←→ [集団主義]一蓮托生.親の因果が子に報い.
[罪を意識] Religion is the rule of life. ←→ [世間を意識]生きて虜囚の恥かしめを受けず.忠臣は二君に仕えず.


 きれいに図式化されている.しかし,対比するのに各々の言語からどのようなことわざを持ってくるのかという点には注意しておきたい.昨日の記事「#3425. 英語の対義ことわざ」 ([2018-09-12-1]) で見たように,日英語ともに対義ことわざというものがあり得るからだ.例えば,英語の Offense is the best defence と日本語の「和をもって尊しとなす」とを対比しているが,前者の日本語版「攻撃は最大の防御」も,現在の日本では広く通用している.この種の文化比較の議論には,先に結論ありきといった雰囲気がちらつきはするが,腑に落ちるところがないかといえば,それもウソである.確かにおもしろい.

 ・ 安藤 邦男 『ことわざから探る 英米人の知恵と考え方』 開拓社,2018年.

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