hellog〜英語史ブログ

#3425. 英語の対義ことわざ[proverb]

2018-09-12

 互いに反対の意味のことわざ(対義ことわざ)があることは,日本語でもよく知られている.「急がば回れ」と「善は急げ」,「二度あることは三度ある」と「三度目の正直」,「終わりよければすべてよし」と「始めよければ終わりよし」,「覆水盆に返らず」と「明日は明日の風が吹く」等々.英語にも似たような対義ことわざが用意されている.安藤 (11--13) より,いくつか挙げてみよう.

A good beginning makes a good ending. ←→ All is well that ends well.
A little learning is a dangerous thing. ←→ It is better to know something than to know nothing.
An occasion lost cannot be redeemed. ←→ Tomorrow is another day.
One is never too old to learn. ←→ You can't teach an old dog new tricks.
The tailor makes the man. ←→ The cowl (or hood) does not make the monk.
Experience is a good (or the best) teacher. ←→ Experience is the teacher of fools.
Love is a flower which turns into fruit at marriage. ←→ Marriage is the tomb of love.
Many hands make light work. ←→ Too many cooks spoil the broth.


 このような対義ことわざのペアを見せられると,ことわざというのはいい加減なものだなと思いたくなる.ところが,安藤 (11--12) はそれは野暮な見方だという.

 さて,このように意味の正反対のことわざに出会うと,割り切ることの好きな人は,「どちらかハッキリせよ」といって不満に思うかも知れません.あるいは,ことわざは昔の人が思いつきで言ったことだから,非科学的で矛盾していて当たり前,だからあまり意味がないと思うかもしれません.しかし,それはことわざの何たるかをわきまえないものというべきでしょう.
 たしかに,これらは一見矛盾しているように思われます.しかし,何かを成し遂げようとする場合のことを考えてください.始めの段階では,私たちは「始めが大事」と言って覚悟を新たにしなければなりませんが,終わりの段階になればそのときにはまた,「終わりが大事」と言って気持ちを引き締めなければならないのです.ことわざは,それぞれの状況のそれぞれの段階における知恵ですから,けっして矛盾しているわけではありません.それぞれの段階に応じて重点の置き方が違っているだけであって,どちらも真実なのです.


 はい,私のことわざ観は完全に野暮でした! 大人の解釈をもって,ことわざのワキマエを学んでいきたいと思います.

 ・ 安藤 邦男 『ことわざから探る 英米人の知恵と考え方』 開拓社,2018年.

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