近年,語用論では,「周辺部」 (periphery) 周辺の研究が注目されてきている.先月も青山学院大学の研究プロジェクトをベースとした周辺部に関する小野寺(編)の論考集『発話のはじめと終わり』が出版された(ご献本ありがとうございます).
理論的導入となる第1章に「周辺部」の定義や研究史についての解説がある.作業上の定義を確認しておこう (9) .
周辺部とは談話ユニットの最初あるいは最後の位置であり,そこではメタテクスト的ならびに/ないしはメタ語用論的構文が好まれ,ユニット全体を作用域とする
周辺部には最初の位置(すなわち左)と最後の位置(右)の2つがあることになるが,両者の間には働きの違いがあるのではないかと考えられている.先行研究によれば,「左と右の周辺部の言語形式の使用」として,次のような役割分担が仮説され得るという (25) .
左の周辺部 (LP) | 右の周辺部 (RP) |
---|---|
対話的 (dialogual) | 二者の視点的 (dialogic) |
話順を取る/注意を引く (turn-taking/attention-getting) | 話順を(譲り,次の話順を)生み出す/終結を標示する (turn-yielding/end-marking) |
前の談話につなげる (link to previous discourse) | 後続の談話を予測する (anticipation of forthcoming discourse) |
返答を標示する (response-marking) | 返答を促す (response-inviting) |
焦点化・話題化・フレーム化 (focalizing/topicalizing/framing) | モーダル化 (modalizing) |
主観的 (subjective) | 間主観的 (intersubjective) |
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