hellog〜英語史ブログ

#612. Academic Word List[lexicology][lexicography][academic_word_list][web_service][text_tool][elt]

2010-12-30

 英語教育や辞書学の分野で Academic Word List (AWL) という語彙集が知られている.1998年に Avril Coxhead が The Academic Corpus という350万語からなる独自コーパスをもとに英語教育用に開発した570語とその派生語(合わせて word family と呼ばれる)からなる語彙集で,高等教育で用いられる頻度の高い語からなっている.
 もう少し詳しく AWL の語彙選定基準を記せば次のようになる.(1) 各 word family がコーパスの Arts, Commerce, Law, Science 部門のサブセットすべてにおいて生起し,かつ細分化された28分野のサブセットの過半数に生起する.(2) 各 word family の出現頻度がコーパス全体で100回を超える.(3) 各 word family がコーパスの各部門で最低10回は生起する.(4) GSL ( General Service List ) (1953) の最頻2000語は除く ( see [2010-03-02-1] ) . (5) 固有名詞は除く.(6) et al, etc, ibid などの最頻ラテン語表現は除く.
 こうして厳選された語彙集が AWL で,AWL Headwords から閲覧およびダウンロードできる.word family の頻度の高い順に1から10の Sublists としてグループ分けされており,すべて合わせるとコーパス全体に生起する語の9.8%を覆うという.
 最近の上級者用英英辞書は軒並み AWL の重要性を認識しているようだ.2006年出版の Longman Exams Dictionary を皮切りに,2007年の Longman Advanced American Dictionary, 2nd ed.,2009年 Longman Dictionary of Contemporary English, 5th ed. など売れ筋辞書でも AWL が考慮されている ( Dohi et al., p. 174 ) .Macmillan, Collins COBUILD 系でも同様である.目下の AWL の評価は Dohi et al. によると以下の通りである.

It remains to be seen whether Coxhead's AWL will continue to be used, will be revised or replaced in future advanced learners' dictionaries, because not all scholars concur with her AWL. . . . The AWL could be regarded for the time being as "a quick reference" for academic vocabulary until more research bears fruit . . . . (100)


 関連して The AWL Highlighter なるツールがあり,ここに英文テキストを入れると,AWL 語彙をハイライトしてくれる.私が最近書いた英語論文のイントロ部の1235語で試してみたら,Sublist 10 までのレベルで128語がハイライトされた.これは全体の10.36%であり,academic 度は合格か!?

  ・ Dohi, Kazuo, Tetsuo Osada, Atsuko Shimizu, Yukiyoshi Asada, Rumi Takahashi, and Takashi Kanazashi. "An Analysis of Longman Dictionary of Contemporary English, Fifth Edition." Lexicon 40 (2010): 85--187.

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