スタッフの著作


フアン・ホセ・サエール 著 浜田和範 訳
『グロサ』
水声社、2023年

二人の青年が道を歩きつつ、両者ともが行きそびれたある誕生日会の様子を、片方が人づてに聞いた話をもとに再現します。さまざまな偶然に見舞われながらも彼らは、やがて別々の形で破局へと飲み込まれていくことも知らず、まっすぐな通りを進み続けます。
ありふれた春の朝、一時間のうちに膨大な過去と未来が響き合うこの小説は、作者サエールの母国アルゼンチンのみならず、スペイン語圏文学全体でも傑作に数えられています。そんな散歩の話がどうしてそんな傑作であるのか、破局とは一体何なのか、気になる人はぜひ読んで確かめてみてください。



山口恵美子 編著
『ウルグアイを知るための60章』
明石書店、2022年

サッカー強豪国、牛肉の産地としても知られる南米の国ウルグアイ。80~90年代には多国間交渉ウルグアイ・ラウンドの舞台になり、近年は「世界一貧しい大統領」が話題を呼んだ。諸分野の専門家が結集し、国の全体像を提示する初めてのウルグアイ入門書。(出版社による紹介文)
浜田和範が「文学」の2章を分担執筆しています。



Yoshimi Orii & María Jesús Zamora Calvo, eds.
Cruces y Áncoras: La Influencia de Japón y España en un Siglo de Oro Global
Madrid, Abada Editores, 2020.

1549年フランシスコ・ザビエルの渡日に始まる"El Siglo Ibérico de Japón"(日本におけるイベリアの世紀)は、日本人のスペイン研究者(イスパニスタ)とスペインの日本研究者(ハポノロゴ)との融和的交流のうちに閉じられた研究対象では決してない。政治史・思想史・文学・美術・言語を軸に、両国の交渉史のグローバル・ヒストリーにおける意義を、最新の研究成果を通じて考察する。



オラシオ・カステジャーノス・モヤ 著 浜田和範 訳
『吐き気』
水声社、2020年

下に紹介する『抵抗と亡命のスペイン語作家たち』でも論じた、中米エルサルバドルの作家カステジャーノス・モヤの問題作『吐き気――サンサルバドルのトーマス・ベルンハルト』を含む作品集。荒廃した祖国のあらゆるものを罵倒しつくしたブラックユーモア満載の表題作により著者は殺害予告を受け、亡命を余儀なくされました。副題のトーマス・ベルンハルトはオーストリアの世界的作家で、『吐き気』はそのベルンハルトの文体模写になっています。オーストリアを罵倒しつくした本家の方も読みつつ、なぜそんな凝った芸当がエルサルバドルの一作家によってなされる必要があったのか考えてみると、一粒で二度以上おいしいはずです。



フェリスベルト・エルナンデス 著 浜田和範 訳
『案内係』
水声社、2019年

なんとも掴みがたい独特の浮遊感で知られるウルグアイのピアニスト兼作家、フェリスベルト・エルナンデスの作品集です。私たちが忘れ去ったプリミティブな感覚を思い出させてくれるその世界にいまだに翻弄されつつ、「誰とも似ていない作家」「奇人」とも称されたこの独学作家の全貌がコンパクトに見渡せるよう、日本語版オリジナル編纂で刊行しました。



藤原聖子 編
『世俗化後のグローバル宗教事情』
岩波書店、2018年

日本における宗教研究の最前線がわかるシリーズ本「いま宗教に向き合う」4巻のうちの第3巻。
第11章「プロテスタントの爆発的拡大から半世紀―ラテンアメリカにおける宗教地図の変容」を大久保教宏が担当。



寺尾隆吉 編著
『抵抗と亡命のスペイン語作家たち』
洛北出版、2013年

20世紀のスペインおよびラテンアメリカの内戦や独裁政権、革命といった政治動乱の中で、作家たちがどのように振る舞い、何を書き残したかを共著で検討した一冊です。浜田和範が第7章「暴力に押し潰された声たちの遁走(フーガ)――オラシオ・カステジャーノス・モヤの小説」を執筆しました。上でも紹介したカステジャーノス・モヤが、自作の出版により殺害予告を受け亡命を余儀なくされた経緯を紹介しつつ、多くの人にとっては縁遠いであろう中米の小国にそんなスキャンダルを巻き起こした彼の問題作、そしてその作品世界の全体像を論じています。



折井善果 編
『ひですの経』
教文館、2011年

日本語にはじめて翻訳された西洋文学は何か?英語でもフランス語でもドイツ語でもありません。スペイン語とポルトガル語なんです。 16-17世紀、イエズス会宣教師が当時の最新技術である活版印刷機を日本に持ってきて、当時のキリスト教文学を邦訳した一連の著作、いわゆる「キリシタン版」がそれです。 この『ひですの経』(1611年、長崎刊)は、そのキリシタン版の一つ。現在米ハーバード大学にしか所在が確認されていない、世界に唯一の本。 刊行400年を経てその全貌が明らかになりました。本書はその本文に校註と解説を施したものです。



釈文・解説:折井善果・白井純・豊島正之
『ひですの経』
八木書店、2011年

上記本のもととなる影印(複製)版。ハーバード大学図書館スタッフと、八木書店さんの強力タッグにより、最高技術の複製が実現しました。



折井善果 著
『キリシタン文学における日欧文化比較――ルイス・デ・グラナダと日本』
教文館、2010年

「異文化の邂逅から何が生まれたか?」――キリシタンの信仰教育の中核を担ったのは、16世紀スペイン人神学者ルイス・デ・グラナダの著作であった。『ぎやどぺかどる』に代表される信心書は、キリシタン時代の日本人にどのように読まれ、キリスト教の受容にどのように貢献したのか?日本においてキリシタン文学が成立する過程に生じた異文化間の共鳴・断絶・受容・変容を実証的研究によって明らかにする。(出版社「解説」より)



清水透、横山和加子、大久保教宏 編
『ラテンアメリカ 出会いのかたち』
慶應義塾大学出版会、2010年

慶應のスペイン、ラテンアメリカ関係の先生方14人が結集して作った本です。なぜ我々は好き好んで遠い遠いラテンアメリカなんか研究しているのかを説き明かします。スペイン語履修者必読の書。

目次
第一部 フィールド研究者が語るラテンアメリカ
第1章 手作りの旅 清水透(経済学部名誉教授)
第2章 グアテマラに生きる人々、グアテマラに通う私―「村の崩壊」という現実の中で 本谷裕子(法学部教授)
第3章 歌と言葉とフィールドワーク―ボリビアとの一〇年を考える 梅崎かほり(法学部非常勤講師・神奈川大学外国語学部助教)
第二部 政治・経済・法律研究者が語るラテンアメリカ
第4章 地球の反対側で何が起こっているのか?―チリ現代政治史の研究 安井伸(商学部准教授)
第5章 ラテンアメリカ政治研究の重要性と魅力について 出岡直也(法学部教授)
第6章 貧困のない世界をめざして―「エコノミスト」から「アクティビスト」へ 山本純一(環境情報学部教授)
第7章 ブラジルそしてラテンアメリカを通じて見る法文化と法律学 前田美千代(法学部准教授)
第三部 スペイン研究者が語るラテンアメリカ
第8章 文芸誌『セルバンテス』(一九一六―二〇年)を読む―二〇世紀初頭、スペインとラテンアメリカの文人たちの交流 坂田幸子(文学部教授)
第9章 アメリカ「発見」前夜のスペイン文学 瀧本佳容子(商学部教授)
第10章 人の移動と社会変容―カタルーニャの近代化とキューバの富 八嶋由香利(経済学部教授)
第四部 歴史研究者が語るラテンアメリカ
第11章 「アステカ学」へのアプローチ 井関睦美(文学部非常勤講師・明治大学商学部准教授)
第12章 メキシコの密貿易に魅せられて 伏見岳志(商学部准教授)
第13章 三、〇〇〇里の彼方コスタリカとメキシコでプロテスタントの歴史を追う 大久保教宏(法学部教授)
第14章 古文書が紡ぐ物語―フランシスカ・インファンテの結婚と転換期の植民地メキシコ 横山和加子(商学部教授)



狐崎知己、出岡直也、本谷裕子 編
Civic Identities in Latin America?
慶應義塾大学出版会、2008年

法学部教員担当箇所
Naoya Izuoka,"Preface."
Norihiro Okubo, "Social Attitudes and Religious Division in Guatemala."
Yuko Honya, "Identity and Political Consciousness of Mayan Indigenous Women in Guatemala: A Comparison of Analysis of a Questionnaire and Ethnographical Data from the Nahualá Village."



大久保教宏 著
『プロテスタンティズムとメキシコ革命―市民宗教からインディヘニスモへ』
新教出版社、2005年

ラテンアメリカとプロテスタンティズム、というのはなかなか結び付きにくいかもしれないけれど、実は1910年に始まるメキシコ革命に、プロテスタンティズムが深く関わっていた…。