[2010-01-22-1]で世界の言語の数を話題にした.今回は,言語数と各言語の母語話者数との関係を考えてみる.
以下の表は,世界に約6000言語が存在すると仮定し,その母語話者数との関係を一覧にしたものである.これは,1999年版の Ethnologue を参考に,Crystal がまとめたものである (14--15).
| Population of Native Speakers | Number of Languages | % | Cumulative downwards % | Cumulative upwards % |
|---|---|---|---|---|
| more than 100 million | 8 | 0.13 | 99.9 | |
| 10--99.9 million | 72 | 1.2 | 1.3 | 99.8 |
| 1--9.9 million | 239 | 3.9 | 5.2 | 98.6 |
| 100,000--999,999 | 795 | 13.1 | 18.3 | 94.7 |
| 10,000--99,999 | 1,605 | 26.5 | 44.8 | 81.6 |
| 1,000--9,999 | 1,782 | 29.4 | 74.2 | 55.1 |
| 100--999 | 1,075 | 17.7 | 91.9 | 25.7 |
| 10--99 | 302 | 5.0 | 96.9 | 8.0 |
| 1--9 | 181 | 3.0 | 99.9 |
世界に言語はいくつあるか? 論者によって3,000という数から10,000という数まで様々で,一定しない.だが,複数の論者の平均値としてもっともよく耳にする数が,6,000前後である.
だが,なぜ論者によって数値が違うのだろうか.言語は客観的に数えられないものなのだろうか.Crystal は世界の言語の数を正確に把握できない理由を5点挙げている (3--5).
(1) そもそも世界規模の調査が少ない.確かに20世紀後半からは Ethnologue などいくつかの機関が世界的な調査をおこなっているが,こうした試み自体が比較的新しいものであり,世界言語統計は始まったばかりというべきである.
(2) 多くの論者は上記の調査が不完全であることを知っているために,言語数を任意に切り上げたり切り下げたりしがちである.
(3) 消滅する言語の数とそれらが消滅する速度を正確に把握できない.
(4) 新たに発見される言語の数と発見の頻度を正確に把握できない.(もっとも,発見される「新言語」によって世界の言語数が劇的に増えるとは考えにくいので,影響は僅少だろうが.)
(5) ある変種を「言語」 ( language ) とみるか,ある言語の「方言」 ( dialect ) とみるかについて,明確な基準がない.
昨今,世界規模の調査も進められてきており,(1) から (4) の問題点については改善されてゆくだろう.だが,(5) は社会言語学上の古典的な問題であり,解決の糸口がない.
例えば,1990年には Serbo-Croatian という一言語だったものが現在では Serbian, Croatian, Bosnian と三言語に分裂している.言語が変わったわけではなく,旧ユーゴスラビアが政治的に分裂したがゆえの事態である.
同じように,英語が今後ますます多様化してゆくことを考えると,Indian English, Singapore English, Caribbean English などはすべて English から独立した別の言語として数えられるようになるかもしれない.
数えるって難しい.
・Crystal, David. Language Death. Cambridge: CUP, 2000.
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