先日,知識共有サービス Mond でいただいた質問に回答しました.
結論としては,t の弾音化 (flapping or tapping) は遅くとも中英語以降に生じていた,ということになります.イングランドで異音として行なわれていたものが,17世紀以降にアメリカを含む世界各地に移植・継承されたものと思われます.t の弾音化はアメリカ英語に典型的な特徴であるという印象が強いですが,その他の多くのアメリカ英語の特徴とともに,実際の起源は中世イングランドに求められそうです.
回答記事では今回の調査に際して当たった典拠を記していませんでしたが,主に Dobson (Vol. 2, p. 956) と Minkova (147--48) に拠りました.Dobson の記述をメモとして残しておきます.
(4) Intervocalic [t] becomes [r]
385. From early in the sixteenth century there appear the forms porridge, porringer, &c. for earlier pottage, potager (see OED, s.vv.), though the older forms also survived (thus Salesbury has potanger and Bullokar potage). Coles gives porridg and porringer as 'phonetic' spellings of pottage and pottinger, from which it appears that written forms with t may sometimes conceal spoken forms with [r].
関連して「#61. porridge は愛情をこめて煮込むべし」 ([2009-06-28-1]),および r と rhotic の記事群も参照.
・ Dobson, E. J. English Pronunciation 1500--1700. 2nd ed. 2 vols. Oxford: OUP, 1968.
・ Minkova, Donka. A Historical Phonology of English. Edinburgh: Edinburgh UP, 2014.
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