metaphor と metonymy について,「#2187. あらゆる語の意味がメタファーである」 ([2015-04-23-1]),「#2406. metonymy」 ([2015-11-28-1]),「#2196. マグリットの絵画における metaphor と metonymy の同居」 ([2015-05-02-1]),「#2496. metaphor と metonymy」 ([2016-02-26-1]) で話題にしてきた.今回も,両者の関係について考えてみたい.
次の2つの文を考えよう.
(1) Metonymy: San Francisco is a half hour from Berkeley.
(2) Metaphor: Chanukah is close to Christmas.
(1) の a half hour は,時間的な隔たりを意味していながら,同時にその時間に相当する空間上の距離を表わしている.30分間の旅で進むことのできる距離を表わしているという点で,因果関係の隣接性を利用したメトニミーといえるだろう.一見すると時間と空間の2つのドメインが関わっているようにみえるが,旅という1つのドメインのなかに包摂されると考えられる.この文の主題は,時間と空間の関係そのものである.
一方,(2) の close to は,時間的に間近であることが,空間的な近さに喩えられている.ここでは時間と空間という異なる2つのドメインが関与しており,メタファーが利用されている.この文の主題は,あくまで時間である.空間は,主題である時間について語る手段にすぎない.
Lakoff and Johnson (266--67) は,この2つの文について考察し,メタファーとメトニミーの特徴の差を的確に説明している.
When distinguishing metaphor and metonymy, one must not look only at the meanings of a single linguistic expression and whether there are two domains involved. Instead, one must determine how the expression is used. Do the two domains from a single, complex subject matter in use with a single mapping? If so, you have metonymy. Or, can the domains be separate in use, with a number of mappings and with one of the domains forming the subject matter (the target domain), while the other domain (the source) is the basis of significant inference and a number of linguistic expressions? If this is the case, then you have metaphor.
・ Lakoff, George, and Mark Johnson. Metaphors We Live By. Chicago and London: U of Chicago P, 1980.
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