ELF ( English as a Lingua Franca ) あるいは EIL ( English as an International Language ) としての英語の現状と未来を考えるうえで,人口統計は重要な示唆を与えてくれる.Crystal (71) では,2001年における人口統計により主要な ENL 国と ESL 国の人口および直近5年間の人口増加率が示され,前者が減少し後者が増加するという構図が鮮明に浮かび上がった.単純化していえば,英語母語話者の人口が減る一方で英語非母語話者の人口が増えているということであり,今後もこの傾向が続いてゆくとなると,[2009-10-17-1]で示した英語話者の分布において ENL 比率(円グラフの黄色部分)がますます圧迫されてゆくということになる.従来より規範的な変種として認められてきた British English や American English のブランドが,はたしてこの数的な圧迫のもとで今後も維持されてゆくのかどうか.英語の未来にかかわるエキサイティングな問題である.
Crystal の示した統計はすでに古くなったので,今回は最新版の統計を用いて Crystal と同様の表を作成してみた.ENS 国,ESL 国の詳しいリストは[2009-10-21-1]に掲げたとおりだが,今回は主要国に限った.ENS 国については7カ国(参考までに日本も加えた),ESL 国については原則として2010年年央時において人口2000万人を超える国を対象とした.統計値の典拠は UN, World Population Prospects: The 2008 Revision Population Database だが,これに基づいて作成された便利な表が国立社会保障・人口問題研究所のページから入手できたので,主にこれを利用した.人口の単位は1000人.人口増加率の読み方は,一年間に人口が1%ずつ増加する国は70年後には人口がほぼ2倍になる.
ENL countries | population (2010) | population growth rate (2005-2010) (%) |
---|---|---|
USA | 317,641 | 0.96 |
UK | 61,899 | 0.54 |
South Africa | 50,492 | 0.98 |
Canada | 33,890 | 0.96 |
Australia | 21,512 | 1.07 |
Ireland | 4,589 | 1.83 |
New Zealand | 4,303 | 0.92 |
Japan (for reference) | 126,995 | -0.07 |
ESL countries | population (2010) | population growth rate (2005-2010) (%) |
---|---|---|
India | 1,214,464 | 1.43 |
Pakistan | 184,753 | 2.16 |
Bangladesh | 164,425 | 1.42 |
Nigeria | 158,259 | 2.33 |
the Philippines | 93,617 | 1.82 |
Egypt | 84,474 | 1.81 |
Tanzania | 45,040 | 2.88 |
Kenya | 40,863 | 2.64 |
Uganda | 33,796 | 3.27 |
Nepal | 29,853 | 1.85 |
Malaysia | 27,914 | 1.71 |
Ghana | 24,333 | 2.09 |
Sri Lanka | 20,410 | 0.88 |
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