動詞 (verb) に関する範疇 (category) として,時制 (tense) とは別に相 (aspect) がある.「#4655. 動詞の「相」って何ですか?」 ([2022-01-24-1]) で解説した通りだが,もう1つ小野 (141--42) による説明を紹介したい.
アスペクトとは,動詞の表す状態や出来事が時間軸に沿ってどのように展開するかを異なる観点から見る見方である.これを理解するために,例えばビデオのコマ送りのようなものを想像してみるとよい.静止したものはコマ送りにしてもコマごとの場面変化はない.しかし,動くものや変化するもの,例えばコップが床に落ちて割れるシーンなどは,コマごとに違った場面が映るはずである.これと同様に,動詞の表す状態や出来事を時間軸に沿った場面展開に分解し,どのような展開をするかという観点から分類したものがアスペクトという見方である.
相の分類は様々になされ得るが,一般的には以下の3つの意味素性とその組み合わせによるものが知られている.まず3つの意味素性を示そう(小野,p. 142).
a. [±dynamic]:動的 (dynamic) / 静的 (static)
b. [±punctual]:瞬間的 (punctual) / 継続的 (durative)
c. [±telic]:完結的 (telic) / 非完結的 (atelic)
次に,これらの3つの意味素性を組み合わせ,動詞の相を4種類に分類してみる.小野 (142) の表に例文を加えたものを示そう.
dynamic punctual telic ex. a. 状態 (State) - - - Marvin resembled his mother. b. 活動 (Activity) + - - Marvin walked. c. 達成 (Accomplishment) + - + Marvin built a house. d. 到達 (Achievement) + + + Marvin arrived.
・ 小野 尚久 「第5章 語彙意味論」『日英対照 英語学の基礎』(三原 健一・高見 健一(編著),窪薗 晴夫・竝木 崇康・小野 尚久・杉本 孝司・吉村 あき子(著)) くろしお出版,2013年.
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