hellog〜英語史ブログ

#4300. サッポロ LAGAR が発売されました[spelling][orthography][prestige]

2021-02-03

 この数週間待ちわびていたのですが,昨日,サッポロビールより新商品の缶ビール「サッポロ 開拓使麦酒仕立て」が発売されました.ポイントは,缶のデザインに表記されている LAGAR です.「ラガー」の綴字は正しくは lager で -er をもつのですが,印刷では -ar となっているのです.  *
 詳細はこちらの1月13日付の朝日新聞デジタルの記事をご覧いただければと思います.サッポロビールが事前にこのスペルミスに気づき,発売中止を決めていたけれども,世論の要望を受けてそのまま売り出すことに決めたという趣旨です.
 私個人としては(ビール好きであることも関係しますが),指摘されなければ気づかないほどの小さなスペルミスで発売中止にするというのはもったいないという立場で,サッポロビールの決断を支持したいと思います.ただし,1英語教員として手放しに寛容主義を貫くわけにもいかないという難しい立場にもありますので,胸中をお察しください(笑).
 私的な見解は別として,一般的にいえばスペルミスは社会的信用を失墜させることが多いというのも事実です.サッポロビールの最初の発売中止の決定も,信用失墜を恐れてのことでしょう.ほんの1字の誤りにすぎず,それによって誤解が生じることはまったくないわけですが,それでも社会的に侮れないのが正書法 (orthography) というものです.
 私も一消費者としては「問題ない」と無責任に言ってしまえますが,もし自分がサッポロビールの社長だったらどうするかなあ,などと考えてみました.皆さんはどのように考えるでしょうか.
 スペルミスを巡る考察として,以下の記事もどうぞ.

 ・ 「#2288. ショッピングサイトでのスペリングミスは致命的となりうる」 ([2015-08-02-1])
 ・ 「#3671. オーストラリア50ドル札に responsibility のスペリングミス (1)」 ([2019-05-16-1])
 ・ 「#3672. オーストラリア50ドル札に responsibility のスペリングミス (2)」 ([2019-05-17-1])

 ちなみに,早速,昨晩このビールを買って飲んでみました.売り場には「スペルは間違えたけど,味は間違いなし!」という粋な文句がありました.3月1日までの限定販売で売り切れたら終わりということですので,皆さん走りましょう.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow