hellog〜英語史ブログ

#3414. 「主語+助動詞」が「助動詞+主語」となる場合 (2)[syntax][auxiliary_verb][inversion][word_order][optative][may]

2018-09-01

 昨日の記事 ([2018-08-31-1]) に引き続いての話題.Huddleston and Pullum より,現代英語でデフォルトの語順が倒置されて「助動詞+主語」となる9つのケースを紹介した.この9つを大きく2つのタイプに分けると,非主語の句が前置されることにより倒置が引き起こされるものと,そうでないものとに振り分けられる.前者はさらに2分され,そのような句がある場合に必ず倒置しなければならないケースと,倒置が任意であるケースとが区別される.Huddleston and Pullum (97) よりまとめよう.

UNTRIGGEREDTRIGGERED
obligatoryoptional
Closed interrogativesOpen interrogativesExclamatives
Conditional inversionInitial negativeOther fronted elements
Optative mayInitial only
Initial so/such


 とりわけ興味深いのは "UNTRIGGERED" に属する3種である.ある種の名詞句によって "TRIGGER" され(得)るものについては,ある種の引き金があるから倒置されるのだと表面的には納得することができる(より深く追求すれば,それはそれで謎ではあるが).しかし,UNTRIGGERED の3種については,表現としての引き金があるわけでもなく,そのような構文ではただ単に倒置されなければならないのだ,という規則だけがあるように思われる.とはいえ,純粋に統語的な問題なのだろうか.そこに語用的な動機づけはないのだろうか.
 "UNTRIGGERED" の3種のうち,"Closed interrogatives" には「主語+助動詞」を取る肯定文の相方があり,"Conditional inversion" にも「if +主語+助動詞」という相方がある.ところが,"Optative may" については標準的な相方というべき構文がない.祈願の may が主語の前に立つというのは,どうも統語的には極めて特異のようである.これについては「#1867. May the Queen live long! の語順」 ([2014-06-07-1]),「#2256. 祈願を表わす may の初例」 ([2015-07-01-1]),「#2478. 祈願の may と勧告の let の発達の類似性」 ([2016-02-08-1]),「#2484. 「may 祈願文ができるまで」」 ([2016-02-14-1]) で扱ってきたので,ご参照を.

 ・ Huddleston, Rodney and Geoffrey K. Pullum. The Cambridge Grammar of the English Language. Cambridge: CUP, 2002.

Referrer (Inside): [2018-09-02-1]

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