hellog〜英語史ブログ

#2130. "I wonder," said John, "whether I can borrow your bicycle."[syntax][word_order][verb][agreement]

2015-02-25

 主語と動詞が倒置される例に,標題のような直接引用を導く said John などの表現がある.引用される文句の後または中間に来るときに,現在形あるいは過去形の伝達動詞が主語に前置される場合である.このような位置で I said, I replied, I thought などの通常の語順を取る場合もあるが,quoth の場合には倒置されるのが規則である.細江 (163--64) から例を挙げよう.

 ・ "Can I have a light, sir?" said I.---Stevenson.
 ・ "My very dog," sighed poor Rip, "has forgotten me!"---Irving.
 ・ But where, thought I, is the crew?---Irving.
 ・ There was no getting away from these verities, thought Constance.---Bennett.
 ・ "The swine turned Normans to my comfort!" quoth Gurth.---Scott.
 ・ Quoth I: "But have you no prison at all now?"---William Morris.
 ・ "Well," quoth I, "I have always been told that a woman is as old as she looks."---ibid.


 引用される文句の後または中間の位置では quoth を除き,SVもVSもいずれも可能ということだが,主語が代名詞か名詞によっても分布は異なる.Quirk et al. (1022) によると,主語が名詞の場合の John saidsaid John はいずれも普通だが,主語が代名詞の場合は he said が普通で,said he は珍しいか古風だという.古い英語では said he などもごく普通に見られたが,現代までに分布を狭めたらしい.
 一方,引用される文句の前に置かれるときに通常倒置は起こらない.しかし,特殊な環境においては起こりうる.細江 (165fn) によると,

もっともややこっけい味を帯びた文または人の発言によって事件の推移の急であるときには,Said she, "Tom, it was middling warm in school, warn't it?"---Mark Twain; Said I: "How do you manage with politics?"---William Morris のようなものもある。すべて,上記の場合にも後に来るものに重点がある。したがって主語が名詞である場合に転置が多く,代名詞のときには常位置が多い。ゆえに代名詞の主語が動詞よりも後に来たときには,特にそれが強く示されているものと見てよい。反対に主語が名詞で,それが動詞より前にあったら,動詞に重点がおかれているものと解すべきである。Cp. "Mr. Sherlock Holms, I believe," said she.---Doyle (これはよもや知るまいと思っていた女が,ちゃんと知っていたから,she が強調された場合); Barbara looked enchanting to-day, Basil thought.---Alfred Noyes (これは Basil の思いに注意が向けられている場合).


また,journalistic writing でも,引用文句の前でときにVSとなる場合がある (ex. "Declared tall, nineteen-year-old Napier: 'The show will go on'." (Quirk et al. 1024fn)) .
 ほかに変わったところでは,くだけた会話において行儀の悪い言い返しとして,-s 語尾をつけた says yousays he などが聞かれることがある.A: I'm going to win this game., B: Says you! の如くであり,ここでBが意味しているのは "That's what you say." ほどである.
 通時的な関心としては,被引用文句の後や中間において said he のタイプが減少してきた経緯と理由が気になる.歴史統語論や歴史語用論の観点からある程度研究されているのではないかと思われるが,今後調べてみたい.
 以下に,直接引用を導く典型的な伝達動詞を一覧していおこう (Quirk et al. 1024)

add, admit, announce, answer, argue, assert, ask, beg, boast, claim, comment, conclude, confess, cry (out), declare, exclaim, explain, insist, maintain, note, object, observe, order, promise, protest, recall, remark, repeat, reply, report, say, shout (out), state, tell, think, urge, warn, whisper, wonder, write


 ・ 細江 逸記 『英文法汎論』3版 泰文堂,1926年.
 ・ Quirk, Randolph, Sidney Greenbaum, Geoffrey Leech, and Jan Svartvik. A Comprehensive Grammar of the English Language. London: Longman, 1985.

Referrer (Inside): [2015-03-25-1]

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