「#132. 古英語から中英語への語順の発達過程」 ([2009-09-06-1]) と昨日の記事「#1213. 間接目的語の位置の固定化の歴史」 ([2012-08-22-1]) に引き続き,Fries の研究の紹介.今回は,属格名詞が被修飾名詞に対して前置されるか後置されるかという問題について.
c900--c1250年の発展について,次のような結果が得られた (Fries 205) .
| c. 900 | c. 1000 | c. 1100 | c. 1200 | c. 1250 |
Genitive before its noun | 52.4% | 69.1% | 77.4% | 87.4% | 99.1% |
Genitive after its noun | 47.6% | 30.9% | 22.6% | 12.6% | 0.9% |
早くも13世紀には,属格名詞の前置が固定可されていたことがわかる.
関連して,17世紀後半に属格名詞ではなく通格名詞(単数でも複数でも)が他の名詞に前置されてそのまま修飾語として用いられる例 (ex.
school teacher,
examination paper) が現われるが,修飾語と被修飾語の位置関係が固定されていなければ不可能な統語手段である (206) .
これまでに動詞と直接目的語と間接目的語の位置関係,属格名詞と被修飾名詞の位置関係の歴史について見てきたことになるが,いずれも遅くとも中英語の終わりまでには現代英語的な語順に固定していたことがわかる.中英語は,語順の固定可が著しく進んだ時代と結論づけてよいだろう.
・ Fries, Charles C. "On the Development of the Structural Use of Word-Order in Modern English."
Language 16 (1940): 199--208.
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