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・ 概要
・ 授業計画
・ 校外学習(湘南海岸、大磯・小田原・箱根火山)
・ 講演会
・ 大学との連携

【概要】
選択地学T(地質)は、従来は野外活動を重視した地質学・地形学の実習を行っていたが、SSH指定を受けてその目的を「身の回りの物質や環境を分析してその成り立ちを理解することで、生徒の研究技能と創造性を向上させる」とした。地質学は地上に展開する岩石や地層や化石や水などを調べてその成り立ちを明らかにする学問であるが、すでに1年次に地学、2年次に化学と生物を必修科目として履修してきた本校の生徒にとって、これらが融合するような授業展開を行えばより高いレベルの科学教育を体験させることができ、それには地質学をテーマとした分析研究が適当であると考えた。また、分析試料として身近な地域の砂や貝殻や水を対象にすることで、知らないところから提供された薬品どうしを混合するような受動的な科学実験で終わるのを避けるねらいがあった。

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【授業計画】
前期は研究活動を行うのに必要な知識を伸ばすための講義や実習を行い、後期にはいくつかのグループに分かれて研究活動を行い、最終的には科学論文を作成することを目標に掲げた。以下に年間授業計画を示す。

前期課程 4〜7月
   身の回りの地域(関東平野)の姿
* 日吉キャンパスの測量(下末吉台地縁辺部)
* 地形図の読図、地名と地形との関係(○○谷・○○丘など)
* 国分寺崖線の巡検(台地断面の観察、湧水のしくみ)
* 国分寺崖線での採取れきの岩石鑑定と起源をさぐる
   身の回りの地域(関東平野)の構成物質
* ローム層中の鉱物の顕微鏡観察
* 湘南海岸の海岸巡検(砂の多様性と成因)
* 湘南海岸の砂の構成粒子の顕微鏡鑑定
* 富士・箱根・丹沢・関東山地の地質(堆積物の起源)
   身の回りの地域環境の成り立ち(岩石の風化と物質循環、海水面変動)
* 岩石の化学風化、海水成分、イオンの挙動
* 海水準変動と台地面形成史
* 年縞、年輪、氷コア中の同位体比から読み取るリズム、など
後期課程 9〜1月 
* 3班に分かれて研究活動
* 試料採取、大学研究室での化学分析1
* 中間報告会と専門家との議論
* 大磯・小田原・箱根火山巡検と専門家との議論
* 試料採取、大学研究室での化学分析2
* データ解析、発表資料作成
* 口頭発表会
* 科学論文作成


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【校外学習(湘南海岸、大磯・小田原・箱根火山)】
分析に必要な試料を採取し産状を理解するため、校外研修を3回(うち宿泊研修を1回)行った。5月12日(月)放課後に行った国分寺崖線の巡検では、台地の地質構造を理解し、ロームの採取を行った。6月1日(日)に行った湘南海岸の巡検では、海岸の砂の構成成分が多様性に富むことを理解させ、砂の起源と運搬過程について考えさせた。11月29日(土)〜30日(日)にSSHより補助を受けて行った校外宿泊研修では、関東南部一円を覆うロームの起源と目される箱根火山の火山活動史について理解を深めるため、大規模火砕流の末端が見られる大磯から順に移動して、箱根火山を東西に横断した。土曜日は激しい雨で、火砕流堆積物やロームの観察や採取が十分に行えたとは言いがたいが、日曜日は雨も上がり、バスや登山電車やロープウェイで移動しながら5ヶ所で観察を行い、箱根火山の重層的な活動と関東平野の堆積物との関係を理解させることができた。また土曜日の夕方に神奈川県立生命の星・地球博物館を訪問し、地球史や地域地質史について理解を深めた後、研究員の平田大二氏・佐藤武宏氏を招いて9月より進めてきた研究の中間発表を行った。両氏より研究に対する評価と今後の方向性について適切な助言をいただいたことで、その後の研究方針が明確になり、生徒の研究に対するモチベーションの向上に結びついたといえる。

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【講演会】
徒の研究意欲を高める目的で、専門家による講演会も行った。11月7日(金)に武蔵工業大学講師の萩谷宏氏を招き、地球上における元素の挙動と循環について講演していただいた。岩石の風化とイオンの移動の話が人間を含めた食物連鎖や地球規模の物質循環の話に結びつくという内容に、生徒の反応も上々であった。また講演会の後半では生徒の個々の研究について、分析手法やデータの精度、結果を説明する別の解釈の可能性など、たくさんの有意義なコメントをいただいた。研究前半の分析で得たデータの意味と後半の研究方針が明確になったことで、生徒の研究に対する意欲を高める効果があったと考えられる。

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【大学との連携】
本科目で研究活動を行うにあたり、旧交のあった慶應義塾大学理工学部の鹿園直建研究室(地球化学研究室)に協力を要請し、鹿園教授や所属する大学院生の協力を仰ぎながら、研究室が所有する分析機器を利用して化学分析を行うことになった。慶應義塾大学理工学部は本校とも地理的に近く(徒歩10〜15分)、授業のある6限から大学に移動して放課後まで分析を行うことが可能である。4月と5月に授業担当者が鹿園研究室を訪問して分析機器の種類と操作方法を確認し、鹿園教授らと議論を重ねながら、これらの分析機器が利用できる研究テーマをある程度想定した。そして、それに必要な知識と概念を講義や実習の形で提供した。前期終了時に生徒への希望調査を行って3つの研究班をつくり、夏期休暇を自主学習期間として、後期の研究活動のモチベーション向上に当てた。  大学での分析は10月に3回、中間試験と文化祭を挟んで11・12月に4回、いずれも6限に授業のある金曜日に行った。研究室の大学院生2名にTAになってもらい、 XRF装置を用いて海岸砂に含まれる輝石の元素分析を行ったり、原子吸光分析装置やイオンクロマトグラフィを用いて地下水のイオン分析を行ったり、貝殻を年輪に沿って粉末化し、酸に溶かして原子吸光分析装置で微量元素の分析を行った。広いとはいえない研究室に高校生12名が押しかけ、慣れない手つきで試料を調整したり分析装置を触ったりするのは、研究室側にとってかなりの負担だったと思われるが、鹿園教授や研究室の学生・院生は我々をいつも快く迎えて下さり、得られたデータの処理方法や結果の評価まで手伝っていただいた。10月から12月にかけては大学の研究室にとっても分析機器がフル稼働する忙しい時期であるが、大学で我々の分析作業が円滑に行えたのは、日程と機器利用の予定をあらかじめ伝えていたことで研究室側が配慮していただいた結果であると思われる。10月の分析作業で得たデータを処理し、結果を評価することで生じた新たな疑問点を、11・12月の分析によって解決できたことは、研究成果を高いレベルに引き上げるのに非常に効果的であった。

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