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clmet - hellog〜英語史ブログ

最終更新時間: 2024-11-12 07:24

2014-01-03 Fri

#1712. as regards [preposition][conjunction][impersonal_verb][corpus][clmet]

 標題の熟語は,形式張った文体で「?に関しては,?について(いうと)」の意味で用いられる.典型的には "As regards the result, you need not worry so much." のように新しい主題を導くのに用いられる.機能的には前置詞といってよいだろう.
 この複合前置詞は,歴史的には「#1201. 後期中英語から初期近代英語にかけての前置詞の爆発」 ([2012-08-10-1]) で示唆したように,近代英語で発達してきた.だが,細かくいえば as regards は初期近代英語ではなく後期近代英語での発達と考えられる.OED の regard, v. によると,語義 8b にこの用法が記述されており,初例としては1797年の "A distinction is made, as regards moral rectitude, in the minds of many individuals." という例文が挙げられている.

b. as regards, as regarded (now rare), †as regarding: with respect or reference to


 一方,同じ動詞の現在分詞から発展した regarding, prep. も同様に用いられるが,こちらの初例としては1779年から " The servant was called, and examined regarding the import of the answer he had brought from Madame la Comtesse." の例文が挙げられている.ただし,名詞句に後続する regarding については17世紀より例があり,これが現在分詞なのか前置詞なのかを決定することは難しい.
 初出年代の細かな問題はあるにせよ,as regardsregarding も後期近代英語期になって根付いた動詞由来の前置詞であると解釈することに大きな異論はないだろう.OED に記載のある †as regarding も含めて,動詞 regard から派生した前置詞の複数の異形が18世紀後半辺りに活躍しだしたと考えられる.
 それを確かめるべく,「#1637. CLMET3.0 で betweenbetwixt の分布を調査」 ([2013-10-20-1]) で紹介した The Corpus of Late Modern English Texts, version 3.0 (CLMET3.0) により,as regards を検索してみた(as regarding は2例ほどヒット).70年間ごとに区切った頻度をまとめると以下のようになった.

DecadeFrequencyCorpus size
1710--17805 (5)10,480,431 words
1780--185070 (18)11,285,587
1850--1920347 (6)12,620,207


 OED が示唆するよりも少し早く,18世紀半ばからの例が確認される.しかし,例文を眺めてみると,おもしろいことに第1期からの例はいずれも so [as] far as regards . . . という形で現れている(上の表でかっこ内に示した頻度は,(in) so [as] far as regards . . . の形で現れる内数)."so far as regards the present subject", "as far as regards your knowledge", "so far as regards our present purpose" の如くである.第2期にも同種の例が多いことを考えると,as regardsas far as regards の省略形として発展・定着してきたとも考えられるかもしれない.
 なお,現在 as regards は複合前置詞としてとらえられており,統語的に分析する意味はないだろうが,歴史的な関心からあえて統語的に分析すれば,as は従属接続詞であり,主語を取らない非人称構文を導いているということになる.regards に後続する名詞句はあくまで動詞の目的語と分析される.

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2013-10-20 Sun

#1637. CLMET3.0 で betweenbetwixt の分布を調査 [corpus][lmode][preposition][clmet]

 今年3月に Leuven 大学の Hendrik De Smet により The Corpus of Late Modern English Texts, version 3.0 (CLMET3.0) が公開された.編者にメールで使用許可をもらえば無償でダウンロードし利用できる.1710--1920年のイギリス英語コーパスで,約3,400万語からなるジャンルを整理したバランスコーパスである(先行版 CLMETEV の1500万語から大幅に拡大).プレーンテキストとタグ付きテキストで配布されており,70年間で分けた3つの時代区分ごとにヒット数を数える Perl スクリプトが付属しており,とりあえず使うのに便利である.コーパスの構成は以下の通り.

Sub-periodNumber of authorsNumber of textsNumber of words
1710--1780518810,480,431
1780--1850709911,285,587
1850--19209114612,620,207
TOTAL21233334,386,225

Genre1710--17801780--18501850--1920
Narrative fiction4,642,670 words4,830,7186,311,301
Narrative non-fiction1,863,8551,940,245958,410
Drama407,885347,493607,401
Letters1,016,745714,343479,724
Treatise1,114,5211,692,9921,782,124
Other1,434,7551,759,7962,481,247


 現在関心をもっている betweenbetwixt の揺れについて,後期近代英語でそれぞれがどのような分布を示すか,CLMET3.0 で軽く調査してみた.付属の検索ツールで検索した結果は,以下の通り.

Sub-periodbetweenbetwixt
1710--17804,869 words (464.58 wpm)657 (62.69 wpm)
1780--18505,457 (483.54 wpm)109 (9.66 wpm)
1850--19207,672 (607.91 wpm)51 (4.04 wpm)


 18世紀中は,between (88.11%) と並んで betwixt (11.89%) が,まだある程度の比率で使われていた.しかし,19世紀以降に激減し,現代英語における影の薄い変異形となったことがわかる.
 なお,De Smet は同じサイトで The Corpus of English Novels (CEN) も公開している.こちらは1882--1922年という1世代の間に書かれた英米の小説を集めたもので,短期間の言語変化調査や作家間の語法比較を念頭に置いたコーパスだという.全体で2,600万語からなる(内訳はソースHTMLを参照).こちらで調べると,between が9,905例 (98.86%),betwixt が114例 (1.14%) であり,確かに後者はすでに影が薄い.

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