中世英語英文学とその現代的意義を探究している岡本広毅先生(立命館大学)が,1ヶ月ほど前より NewsPicks にて「RPGで知る西洋の歴史」と題する興味深いトピックス記事の投稿を始めています.トピックスの説明によると,
エルフ,世界樹,エクスカリバー.
RPG や映画などでわたしたちが親しむこれらの言葉の起源が西洋の物語にあることは良く知られています.このような幻想的なアイテムや魔法は単なるフィクションとして片付けられるようなものではなく,西洋文明や英語文化の根幹にあるものです.このトピックスでは,世界的に愛されてきた名作ゲームや映画,物語でお馴染みの言葉から,西洋の基本的教養を味わいましょう.
とあります.早速読みたくなる方が多いのではないでしょうか.現時点で3本の記事が公開されています
1. ゲーム世界と西洋異国体験 --- RPGの鉱脈(2023年11月14日)
2. 剣と魔法と暗黒 --- 『クロノ・トリガー』にみる西洋の歴史(2023年11月28日)
3. モンスターの息づく世界 --- 野に返りし〈はぐりん〉を偲んで(2023年12月12日)
いずれも読者を引きつける記事ですが,とりわけ2つめの『クロノ・トリガー』に関する記事に引きつけられました.
この記事の後半で「中世」とは何かという話題が取り上げられています.そこで,岡本先生は medieval という単語の多義性に注目します.
ただ,中世とは単に歴史の一期間を指すだけでありません.手元の辞書で,「中世の」を意味する英語の形容詞 "medieval" を調べてみると,時代区分の次に「古臭い」「旧式の」といった後ろ向きの意味が出てきます.より専門的な辞書をみてみると「無知」「残酷」「野蛮」といったネガティブな語義が並びます."get medieval" というフレーズにおいては「中世風になる」ではなく「暴力的になる」ことを意味します.このあからさまな意味の凋落には当然疑問を覚えることでしょう.「クラシック」や「モダン」 といった語から連想するイメージを考慮すればなおさらです.
これを受け,先日12月19日に Voicy heldio で「#932. get medieval 「暴力を振るう」--- 岡本広毅さんの NewsPicks トピックスより」と題する回を配信しました.この配信回の第5チャプターには,なんと岡本先生ご本人が出演されていますので必聴です.同日の夜には,プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」 (helwa) のほうでも続編として「【英語史の輪 #69】get medieval の続き」を配信しました(こちらには岡本先生は出演されていませんのでご注意).medieval という単語とその周辺については,もっといろいろと調べてみたいと思っています.
さて,岡本先生にはこれまでも heldio や hellog でおおいにお世話になっています.以下にリンクを張っておきますので,ぜひ渉猟していただければ.
【 heldio 対談回 】
・ heldio 「#173. 立命館大学、岡本広毅先生との対談:国際英語とは何か?」 (2021/11/20)
・ heldio 「#386. 岡本広毅先生との雑談:サイモン・ホロビンの英語史本について語る」 (2022/06/21)
・ heldio 「#478. 英語ヴァナキュラー談義(岡本広毅&堀田隆一)」 (2022/09/21)
・ heldio 「#544. 岡本広毅先生と『グリーン・ナイト』とその原作の言語をめぐって対談しました」
・ heldio 「#545. ヴァナキュラーな『グリーン・ナイト』(岡本&堀田の対談)」 (2022/11/27)
・ heldio 「#932. get medieval 「暴力を振るう」--- 岡本広毅さんの NewsPicks トピックスより (2023/12/19)
【 hellog 関連回 】
・ 「#4962. 岡本広毅先生と『グリーン・ナイト』とその原作の言語をめぐって対談しました」 ([2022-11-27-1])
・ 「#4600. egges or eyren:なぜ奥さんは egges をフランス語と勘違いしたのでしょうか?」 ([2021-11-30-1])
・ 「#4591. 立命館大学での講演「世界の "English" から "Englishes" の世界へ」を終えました」 ([2021-11-21-1])
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