昨日の記事「#2370. ポルトガル語からの語彙借用」 ([2015-10-23-1]) で,ポルトガル語からの世界的な借用語をみた.この借用語彙の世界性は,15--16世紀にポルトガルが海洋国として世界へ展開した歴史に負っている.その背景を理解すべく,地図も添えつつ,ポルトガルの歴史年表を『ナショナルジオグラフィック 世界の国 ポルトガル』の巻末 (p. 60--61) より再現しよう.
紀元前4200ころ | 初期の組織的な社会によって,ポルトガルのポカ・デ・ガチエールやゴルジネスに巨石墓が建てられる. |
紀元前500 | 鉄器時代のケルト人が北部ポルトガルを支配する. |
紀元前201 | ローマ帝国がポルトガルの南部海岸を支配下におく. |
紀元前140 | ローマがケルト人の抵抗を制圧して支配を拡大する |
紀元前27 | ローマ皇帝カエサル・アウグストゥスが,ポルトガル中部をふくむ属州ルシタニアをつくる. |
567 | ゲルマン系の西ゴート人がイベリア半島に支配を拡大する. |
711 | イスラム教徒の軍隊がイベリア半島に侵入する.その後7年のうちにイベリア半島のほぼ全体が,ムーア人のウマイア朝の支配下におかれる. |
1096 | ブルゴーニュ家のエンリケがポルトゥカーレ伯となる. |
1143 | アフォンソ・エンリケスが王となりイベリア半島の他の部分から分離独立したポルトガル王国が建国される. |
1249 | アフォンソ3世がイベリア半島から最後のムーア人を追い出し,ポルトガル国境を確立する. |
1416 | エンリケ航海王子がザグレスに海軍基地と航海学校をつくり,大航海時代がはじまる. |
1488 | ポルトガル人航海士のバルトロメウ・ディアスが喜望峰をまわる航海に成功.のちにアジアへの航路を確立する. |
1494 | スペインとポルトガルがトルデシリャス条約をむすび,新たに南北アメリカ大陸で発見した土地を両国で分割する. |
1497 | ヴァスコ・ダ・ガマがインドへの2年間の航海に乗り出す.この後,ポルトガル人のゴアへの入植,インドとの貿易が始まる. |
1500 | ペドロ・アルヴァレス・カブラルがブラジルに到達し,ポルトガルとアメリカ大陸との貿易路を開く. |
1572 | ルイス・ヴァス・デ・カモンイスがポルトガル人の永遠の象徴となる『ルジアダス』を著す. |
1580 | スペイン王フェリペ2世がポルトガル王フィリペ1世として即位し,ポルトガルはスペインに併合される. |
1609 | ポルトガル王フィリペ2世がすべてのモリスコ(キリスト教徒に改宗したムーア人)の追放を命じる.この決定により,ポルトガル経済は大きな痛手をうける. |
1650ころ | アズレージョ(装飾スタイル)の主要生産国となる. |
1755 | 大地震がリスボンを襲い,6万人が死亡,多数の建物が倒壊する.リスボンはポンバル侯爵の指揮のもと再建される. |
1807 | ナポレオン・ボナパルトがポルトガルに侵攻.国王ジョアン6世はブラジルに逃れ,1821年までブラジルにいる. |
1822 | ジョアン6世の息子のペドロがブラジルの独立を宣言し,ブラジル皇帝となる. |
1846 | 民衆蜂起により,国内が自由主語と保守主義のふたつの勢力に分かれる. |
1890 | イギリスの最後通牒をうけて,アフリカにおける植民地拡大計画を放棄する. |
1908 | カルロス国王と長男がリスボンで暗殺される.次男がマヌエル2世として即位. |
1910 | 革命勢力がマヌエル2世を退位させ,第1共和制を樹立. |
1911 | 新憲法を採択.女性参政権が認められる. |
1916 | リスボンでドイツ船が拿捕され,ドイツが宣戦布告.ポルトガルは連合国側として第1次世界大戦終結まで2年間戦う. |
1926 | 軍がクーデターで政権を奪い,48年間にわたる軍事政権がはじまる. |
1928 | アントニオ・デ・オリヴェイラ・サラザールが財務大臣に就任する. |
1932 | サラザールが首相となり,やがて独裁者となる. |
1933 | 「エスタド・ノヴォ(新国家)」憲法を採択し,言論の自由を制限し,ストライキおよび反政府運動を禁止する. |
1936 | サラザールがスペイン内戦でフランシスコ・フランコ将軍率いる右派勢力を支持. |
1939 | 第2次世界大戦中の中立を宣言する.しかし戦争のあいだ,イギリスがアゾレス諸島の空軍基地を使用することを認める. |
1947 | 独裁制に反対するリスボンの港湾労働者と軍将校らによる氾濫を,政府が鎮圧. |
1949 | 北大西洋条約機構 (NATO) の創設メンバーとなる. |
1955 | 国際連合(国連)に加盟. |
1961 | インドがポルトガルの植民地ゴアを併合する.アンゴラ,ギニア,モザンビークで反乱がおきる. |
1968 | サラザールが発作で倒れた後,マルセロ・カエターノが首相に就任し,新国家憲法にもとづいて政治をおこなう. |
1974 | カーネーション革命で,軍将校がヨーロッパ最長の独裁制を倒す.民衆の要求により,新政府は民主主義を採用. |
1975 | 植民地だったギニア・ビサウ,モザンビーク,カボベルデ,サントメ・プリンシペ,アンゴラの独立承認の手続きが完了する. |
1982 | 文民政権が復活する. |
1986 | マリオ・ソアレスが60年ぶりの文民の大統領となる.アニバル・カバコ・シルバが首相に就任.ヨーロッパ連合 (EU) の前進であるヨーロッパ経済共同体に加盟. |
1999 | 最後に残っていた海外領土であるマカオが中華人民共和国に返還される. |
2002 | 通貨エスクードの使用をやめ,ユーロに移行する. |
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