副詞接尾辞 -ly については,「#40. 接尾辞 -ly は副詞語尾か?」 ([2009-06-07-1]) をはじめとして,最近では「#1032. -e の衰退と -ly の発達」 ([2012-02-23-1]) でも取りあげた.中英語期以来,副詞の大量生産をもたらしてきたこの -ly の起源を遡ると,その原義が「体,様子」であることがおもしろい.[2009-06-07-1]の記事で解説したので詳しくは繰り返さないが,古英語で -līċ(e) は「形,様子」を意味した(同根の -like も参照).つまり,beautifully は,本来,「美しい体(てい)で」「美しい様子で」の意である.
日本語でも,体や様子などの姿形を指す種々の語が,様態の修飾語を大量生産している.上で訳語に用いた「?の体(てい)で」「?の様子で」のほか,「?風(ふう)に」「?のように」「?ざまに」「?のかっこうで」「?の形で」「?げに」など,枚挙にいとまがない.基体に姿形を意味する接辞を付加して,形容詞や副詞などの修飾語を生み出すという語形成は,ごく自然な語形成なのだろう.beautifully を迂言形で表現すれば,in a beautiful way や in a beautiful manner となる.
英語の -ly はこのように「姿形」から始まったが,徐々にこの原義が感じられなくなり,副詞を作るという抽象的な機能へと発展していった.その結果,姿形とは関係のない,いやむしろ対極にある心情の語に付加して confidently, heartfully, inwardly なども普通に作られるようになった.さらに,時間を表す daily,hourly,weekly,yearly や,順序を表わす firstly, secondly, lastly など,より抽象的な語形成にも貢献した.firstly などの順序副詞は,16世紀に現われ出し,フランス語 premièrement などのなぞりの可能性もある.
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