アメリカ英語の顕著な特徴の一つに,言語的な同質性がある.アメリカの国土面積は世界第3位で,イギリスの40倍,日本の26倍と実に広大だが,その割には方言差が僅少である.その理由は複合的であり,歴史が浅いこと,イギリス諸島の故地から持ち込まれた様々な英語変種の混成であること,多種多様な移民の言語との混成であること,標準を遵守する傾向,合理主義的な言語観などが挙げられるだろうか.
しかし,イギリス英語などと比べて相対的に同質的ということであり,アメリカ英語にも方言は存在する.最も簡便なアメリカ英語の方言区分は,the New England dialect, the Southern dialect, General American と三分する方法である.General American は,その他二つの方言でない方言として定義される大雑把な方言で,一般的なイメージのアメリカ英語に最も近い.
だが,この大雑把な区分はアメリカ方言学の発展とともに大幅に修正・置換されてきた.アメリカ方言学の本格的な研究は,ミシガン大学の Hans Kurath の指揮するプロジェクト The Linguistic Atlas of the United States and Canada として1931年に始められた.1939年に New England,1973--76年に the Upper Midwest,1986--92年に the Gulf States の方言地図が出版され,関連する研究は現在も継続中である.
これらの一連の研究のなかで,1949年に Kurath が出版した A Word Geography of the Eastern United States は現在でも重要な地位を占めている.Kurath は語彙の分布に基づいてアメリカ英語をまず18の小方言区に分け,それを Northern, Midland, Southern の3つの大方言区にまとめた.以下は,Crystal (245) の地図をもとに作成した Kurath の方言区分地図である.
アメリカ方言の区分法には様々な代替案が提起されており,現在でも議論が絶えないが,この Kurath の区分法は基本として押さえておきたい.アメリカ英語の方言区分については,Baugh and Cable (376ff) がよくまとまっている.
・ Crystal, David. The English Language. 2nd ed. London: Penguin, 2002.
・ Baugh, Albert C. and Thomas Cable. A History of the English Language. 5th ed. London: Routledge, 2002.
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