ノルマン人の征服 ( Norman Conquest ) 以降,中英語の前半は,イングランドはフランス語の支配に屈していた.庶民の言語である英語はいわば地下に潜っていたが,13世紀辺りから徐々に英語の復活劇が始まる.だが,フランス語支配の時代に蓄えられた多くの遺産をすべてひっくり返すには,相当な時間とエネルギーが必要だった.例えば,法的文書の英語義務化は18世紀になってようやく施行された.英語の復権は,実に長い道のりだったわけである.
以下の年表は,英語の復権に関連する出来事に絞ってまとめた年表である.
1066年 | ノルマン人の征服 |
12--13世紀 | 英語の文学作品などが現れ始める( Layamon's Brut, The Owl and the Nightingale, Ancrene Wisse, etc. ) |
1258年 | Simon de Monfort の反乱(政府機関へのフランス人の登用に対する抗議.英語の回復も強く要求される.その結果,Henry III は布行政改革の宣言書をラテン語,フランス語だけでなく英語でも出すこととなった.) |
1272年 | Edward I がイングランド王として初めて英語を使用する |
1337年 | Edward III,フランスの王位継承権を主張し百年戦争が始まる( ? 1453年 ) |
1348--50年 | 最初のペストの流行( 1361--62, 1369, 1375年にも流行.黒死病については[2009-08-24-1]を参照.) |
1350年代 | Higden's Polychronicon で,上流貴族の子弟にとってもすでに英語が母語となっていたことが示唆される |
1356年 | 地方裁判所の記録が英語になる |
1362年 | 議会の開会が英語で宣言される |
1363年 | 法廷での使用言語が英語となる (ただし、記録はラテン語) |
1380年代 | ロンドンのギルドが記録に英語を使い始める |
1381年 | Peasants' Revolt |
1384年 | ロンドンのシティーが英語で布告を出す |
1399年 | 英語を母語とする最初の王 Henry IV 即位 |
1414年 | Henry V がイングランド王として初めて英語で手紙を書く(政府内でも英語の使用が奨励される) |
1422年 | ロンドンの醸造業者が手続きをラテン語から英語にする |
1453年 | 百年戦争の終結 |
1488年 | 英語が法的文書の書き言葉として認められる |
1539年 | Great Bible が王により初めて公認される(保守的な宗教の世界でも英語の使用が認められるようになる) |
1628年 | 英語で書かれた最初の法典が編纂される |
1731年 | 法的文書が英語でなければならなくなる |
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