hellog〜英語史ブログ

#4587. 「日本英語受容史略年表」[timeline][english_in_japan][elt]

2021-11-17

 「#4578. 朝ドラ『カムカムエヴリバディ』が始まっています」 ([2021-11-08-1]) で述べたように,日本における英語受容の歴史は,広い意味での英語史の1側面とみることができる.英語の進出と受容とでは視座が異なるものの,英語の拡大の一部であることは間違いない.
 もちろん日本の英語教育や英語学習の歴史にも直結する問題であり,英語関係者の間でもっと関心が広まってしかるべき話題だと思っている.斎藤 (198--99) が以下のように述べているとおりである.

英語をめぐる最近の議論を聞いていると,(とくに「コミュニケーション」能力を中心とした)英語力を高めるための学習法だけが問題視されているような気がしてならない.たしかに,効果的な英語学習法が研究・開発されれば,それはそれで喜ぶべきことであろう.だが,日本の英語学習法をめぐる議論は,つねに日本人にとって英語とは何なのかとの問いを踏まえていなければならない.そしてその問いは,日本人にとって英語とは何だったのかとの問いの延長線上にあるものなのである.


 以下,斎藤 (195--97) より「日本英語受容史略年表」を掲げよう.英語受容史を体現する3名の偉人,福沢・新渡戸・漱石(紙幣の肖像画でもある)の動きと連動させているのがユニークである.関連して「#3695. 日本における英語関係史の略年表」 ([2019-06-09-1]) も参照.

年号日本英語受容史上の重要事項福沢・新渡戸・漱石の動き世界の動き
江戸1600(慶長5)ウィリアム・アダムズ豊後に漂着.(関ヶ原の戦いが起こる) イギリスの東インド会社ができる.
 1776  アメリカが独立宣言をする.
 1808(文化5)フェートン号事件  
 1811(文化8)日本初の英語手引き書『諳厄利亜興学小筌』成る.  
 1834(天保5) 福沢,大阪に生まれる. 
 1840  アヘン戦争が起こる.
 1841(天保12)ジョン万次郎,アメリカ船に救出されてアメリカに渡る.  
 1848(嘉永元)ラナルド・マクドナルド利尻島に上陸.  
 1853(嘉永6)黒船が浦賀に来航.  
 1854(安政元)日米和親条約締結.  
 1856(安政3)蕃書調所が開設される.  
 1859(安政6)横浜開港福沢,横浜を見学し,英学に転向. 
 1860(万延元) 福沢,咸臨丸でアメリカへ. 
 1861  アメリカで南北戦争が起こる.
 1862(文久2)日本初の印刷の英和辞書『英和対訳袖珍辞書』が出版される.新渡戸,盛岡に生まれる. 
 1867(慶応3) 漱石,江戸に生まれる. 
明治1868 福沢,私塾を慶應義塾と改称. 
 18747つの官立の外国語学校が英語学校と改称.  
 1876札幌農学校開校.  
 1877東京と大阪の英語学校を除き官立の英語学校が廃校となる.新渡戸,札幌農学校入学. 
 1884 新渡戸,渡米. 
 1894(日清戦争が起こる.)  
 1896斎藤秀三郎,正則英語学校を創設.  
 1900津田梅子,女子英学塾創立.漱石,渡英. 
 1901(日英同盟締結.)福沢,死去. 
 1903 漱石,第一高等学校校長となる. 
大正1914(第一次世界大戦に参戦.) 第一次世界大戦が始まる.
 1916 漱石,死去. 
 1922ハロルド・パーマー来日  
 1923(関東大震災が起こる.)  
 1924英語存廃論が盛んとなる. アメリカで排日移民法が成立.
昭和1933 新渡戸,死去. 
 1939  第二次世界大戦が始まる.
 1941(太平洋戦争が始まる.)  
 1945(終戦.)  
 1946「カムカム英語会話」放送開始.  
 1951(サンフランシスコ講和条約調印.)  
 1954高校生のAFS留学始まる.  
 1963日本英語検定協会発足.  
 1972中学校学習指導要領改訂,「週3時間」全面実施.  
平成1990  湾岸戦争が起こる.
 1994「オーラル・コミュニケーション」A・B・Cが科目に加わる.  
 1999学習指導要領改訂.  
 2000小渕内閣の諮問機関「21世紀日本の構想」懇談会が「英語第二公用語化」を提言.  
 2002文科省「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」.  
 2002文科省「『英語が使える日本人』の育成のための行動計画」.  
 2009高校学習指導要領告示(2013施行).「授業は英語で行うことを基本とする」と規定.  
 2013文科省「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」.  


 ・ 斎藤 兆史 『英語襲来と日本人 --- 今なお続く苦悶と狂乱』 中央公論新社,2017年.

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