昨日の記事「#4119. isogloss ならぬ heterogloss」 ([2020-08-06-1]) で,isogloss に対する heterogloss という方言学上の概念・用語を導入した.この対となるキーワードについては,理論的に考えておくべき点がいろいろとありそうだ.
Chambers and Trudgill (104--05) によると,両者は互いに翻訳可能であり,方言区分に関する観点こそ異なれど,いずれがより優れた見方かという問題ではないと議論している.その趣旨を解説すると,次のようになる.
注目している言語項に2つの異形があり,一方を△として,他方を○として地図上にプロットすることを考える.現実の分布を目の前にして,方言学者は方言区分のために境界線を引こうとするが,その際に2通りの引き方が可能である.1つは,下の左図のように異形を示す2領域の間の空間(「中途空間」と呼んでおく)に1本線を引くやり方.もう1つは,各々の異形の領域の下限と上限の観察点を結んでいき,計2本の線を引くやり方である.前者が isogloss,後者が heterogloss の考え方ということになる.
△ △ △ △ △ | △ △ △ △ △ | △ △ △ △ | △ △ △ △ | △ △ △ △ △ | ──△─△─△─△─△── ←heterogloss isogloss→ ───────────── | ○ ○ ○ ○ ○ | ──○─○─○─○─○── ←heterogloss | ○ ○ ○ ○ | ○ ○ ○ ○ | ○ ○ ○ ○ ○ | ○ ○ ○ ○ ○
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