#3155. Charles Richardson の A New Dictionary of the English Language (1836--37)[lexicography][dictionary][oed][johnson]


 近代英語期の著名な辞書といえば,Johnson (1755), Webster (1828), OED (1928) が挙がるが,これらの狭間にあって埋没している感のあるのが標題の辞書である.しかし,英語辞書編纂史の観点からは,一定の評価が与えられるべきである.
 Charles Richardson (1775--1865) は,ロンドンに生まれ法律を学んだが,後に語学・文学へ転向し,文献学を重視しつつ私塾で教育に携わった.Johnson の辞書に対して批判的な立場を取り,自ら辞書編纂に取り組んだ.Encyclopædia Metropolitana にて連載を開始した後,1835年より分冊の形で出版し始め,最終的には上巻 (1836) と下巻 (1837) からなる A New Dictionary of the English Language を完成させた.1839年には簡約版も出版している.
 この辞書の最大の特徴は,単語の意味の歴史的発展を,定義によってではなく歴史的な引用文を用いて跡づけようとしたことである.「歴史的原則」(historical principle) にほかならない.用例採集の範囲を中英語の Robert of Gloucester, Robert Mannyng of Brunne まで遡らせ,歴史的原則の新たな地平を開いたといってよい.そして,後にこの原則を採用し,徹底させたのが OED だったわけだ.
 Richardson は Webster には酷評されたという.また,"a word has one meaning, and one only" という極端な原理を信奉したために,様々な箇所に無理が生じ,語源の取り扱いに等にもみるべきものがなかった.しかし,Johnson と Webster という大辞書の後を受け,来るべき OED へのつなぎの役割を果たした存在として,英語史上記憶されるべき辞書(編纂家)ではあろう.
 Knowles (141) は,Richardson の OED への辞書編纂史上の貢献を次のように述べている.

The Oxford dictionary was an outstanding work of historical scholarship, but it was not the first historical dictionary. This was Charles Richardson's A new dictionary of the English language, which appeared in 1836--7, and which attempted to trace the historical development of the meanings of words using historical quotations rather than definitions. The original intention of the Philological Society in 1857 was simply to produce a supplement to the dictionaries of Johnson and Richardson, but it was soon clear that a complete new work was required.

 以上,『英語学人名辞典』 (288--89) の Charles Richardson の項を参照して執筆した.

 ・ Knowles, Gerry. A Cultural History of the English Language. London: Arnold, 1997.
 ・ 佐々木 達,木原 研三 編 『英語学人名辞典』 研究社,1995年.

[ | 固定リンク | 印刷用ページ ]

Powered by WinChalow1.0rc4 based on chalow