hellog〜英語史ブログ

#3116. 巻物から冊子へ,パピルスから羊皮紙へ[history][writing][medium]

2017-11-07

 3--4世紀,書記の歴史において重大な2つの事件が起こった.巻物 (scroll) に代わって冊子 (codex) が,パピルス (papyrus) に代わって羊皮紙 (parchment) が現われたことである.書写材料とその使い方において劇的な変化がもたらされた.まず,「巻物→冊子」の重要性について,『印刷という革命』の著者ペティグリー (19--20) は次のように述べている.

 巻物が冊子へと変わってゆくプロセスは段階的なものだったが、その変化がもたらしたインパクトたるや、数世紀後の印刷術の発明に勝るとも劣らぬほど大きなものであった。冊子が人気を博したのは、便利だったからである。紙の裏面にも書き込めるから、巻物より場所を取らない。それに破損しにくいし、もし傷ついた箇所があっても、簡単にページの差し替えができた。また蔵書は積み上げるか棚に並べるかして保管できるので、どの巻かすぐに見分けがついた。このように冊子状の本は、巻物と比べると、はるかに図書館(室)での収蔵と管理が容易だったのである。さらに冊子は、筆写のために分割もできたし、逆にさまざまなテクストを好みの順番で一冊にまとめることも、簡単にばらばらにして順番を入れ替えることもできた。要するに柔軟性と耐久性に富んでいたのである。
 冊子は実用的であったばかりではない。巻物よりも、はるかに洗練された知的アプローチが可能だった。なにより、多様な読み方ができた。巻物だと、最初から順を追って読んでゆくよりほかないが、冊子ならぱらぱらとめくって拾い読みができる。読者はテクストのある箇所から別の箇所へと、望むままに移動してゆけるから、深い思索を展開できる。冊子は、物語ばかりでなく、知的な手段も提供したのである。


 続けて,「パピルス→羊皮紙」についても言及している (20--21) .

 冊子形式の本が成功した理由には、もろくて摩滅しやすいパピルスに替えて、より耐性のある記録媒体を採用したこともあった。パピルスの代わりに、徐々に羊皮紙が用いられるようになった。〔中略〕
 羊皮紙はまた強度が高く、耐久性にも優れていたため、分量の多いテクストや、豊かな装飾を施した文章に用いることができた。


 このような技術的革新により,書くこと,読むことの意義が変わっていった.また,古文書が朽ちずに現在まで存続することにもなった.まさに,歴史を可能ならしめた革新だったといえよう.
 書写材料の話題については,「#2456. 書写材料と書写道具 (1)」 ([2016-01-17-1]) と「#2457. 書写材料と書写道具 (2)」 ([2016-01-18-1]) ,「#2465. 書写材料としての紙の歴史と特性」 ([2016-01-26-1]),「#2931. 新しきは古きを排除するのではなく選択肢を増やす」 ([2017-05-06-1]),「#2933. 紙の歴史年表」 ([2017-05-08-1]) も参照されたい.

 ・ ペティグリー,アンドルー(著),桑木 幸司(訳) 『印刷という革命 ルネサンスの本と日常生活』 白水社,2015年.

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