#2083. She'll make a good wife. の構文[syntax][verb]


 現代英語で半ば化石化した構文として知られているものに,標記の構文がある.この make の意味・機能は become に近く,学校文法でいえば主格補語を要求する不完全自動詞であるといわれ,その構文は5文型の枠組みいえば SVC とされる.一方,「彼にとって」の意味を加えて She'll make him a good wife. と表現することもでき,hima good wife であるから,この構文は SVOO と解釈できる.ここで両構文が関係しているものと解するならば,もとの She'll make a good wife. はむしろ SVO 構文と分析したくなる.このような事情で,標記の構文は SVC とも SVO ともつかない,両方の特性を兼ね備えた不思議な構文ということになる.解釈の仕方は,統語理論によってもまちまちである.
 この構文はときに再帰代名詞の省略と説明されることがあるが,その説明には,共時的にも通時的にも確たる裏付けがない.共時的には,She'll make herself a good wife. は文法上もちろん可能だが,標記の構文の代用として現われることはあまりない.また,通時的にも,代名詞を含む構文が原型としてあり,そこから再帰代名詞が省略されてこの構文ができたという歴史的過程を確認することはできない.むしろ,歴史的には make の「作る」という原義と目的語を要求する原用法から発展してきた構文の1つにすぎない.OED (語義24)によると,この構文で用いられる make の語義は,"Of a person: to become by development or training. Also, with object a noun modified by good, bad, or other adjective of praise or the contrary: to perform well (ill, etc.) the part or function of." と記述される.主語の表わす人が発展や訓練を経てあるものへと化ける,というほどの意味を表わし,前者に後者となるための素質が備わっていることが含意されている点で become とは異なる.素材と産物の関係とでもいおうか.この用法が,素材と産物の関係を示す make の他の用法からの派生物であることは,現代英語の次のような例から分かる.

 ・ Northern Spies make the best apple pie.
 ・ The platycodon makes a fine pot plant for a cool greenhouse.
 ・ The Morello Cherry, and other deepe coloured pleasant Cherries, no doubt would make a speciall good wine.
 ・ Hydrogen and oxygen make water.
 ・ The clothes don't make the gentleman.

 このような素材と産物を表現する make の用法は,OED の例文をみる限りおよそ中英語に起源をもつようだ.もっとも語義は連続体なので,ものによっては古英語に遡るともいえる.OED の語義24に関する限り,その初出例文は中英語末期の "a1470 Malory Morte Darthur (Winch. Coll. 13) (1990) I. 295, I undirtake he is a vylayne borne, and never woll make man." であり,案外と新しい.近現代英語からの例文をいくつか挙げておこう.

 ・ 1572 H. Middlemore in H. Ellis Orig. Lett. Eng. Hist. (1827) 2nd Ser. III. 8, I think he [sc. the Duke of Anjou] will make as rare a prince as any is in Christendome.
 ・ a1616 Shakespeare Henry VI, Pt. 1 (1623) iv. vii. 44 Doubtlesse he would haue made a noble Knight.
 ・ 1741 Pope Thoughts on Var. Subj. in Wks. II. 311 For a King to make an amiable character, he needs only to be a man of common honesty, well advised.
 ・ 1870 E. Peacock Ralf Skirlaugh III. 25 As the times then went, Mr. Earl made a very fair pastor.
 ・ 1934 H. Roth Call it Sleep i. ix. 63 My, what a tyrant you'll make when you're married!

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