先日授業で英文を読んでいて「細かい」という意味で用いられる fine に出会った(実際には副詞 finely として).「細かい」という語義は確かに馴染みがないかもしれないが,fine rain 「こぬか雨」,fine dust 「細かな埃」などの表現で使用される.
fine の種々の語義や派生語の広がりを理解するには,語源から考えるとよい.形容詞 fine は,Old French fin から13世紀に英語に入った.もっと遡ると Late Latin fīnus "fine, pure" ,さらに Latin fīnis "end" にたどり着く.ラテン語 fīnis は「切り裂く」を意味する語根 fid から派生しており ( cf. fissure 「裂け目」 ) ,この語根の原義を核として数々の語義や派生語が生み出されることとなった.
ものを「切り裂く」ことによって「細かく」なる.ここから「繊細」「鋭敏」「洗練」「精巧」「上品」などの意味が生じた.一方,土地を「切り裂く」と「境界」ができ「範囲」「限度」が生じる.「限度」「限界」から「端」「終点」へと意味が展開し,さらに「始末」「解決」へも拡張した.以下のリストの語はすべて英語にもたらされた fīnis と同根の派生語である.各派生語の意味には,上記の意味のいずれかが反映されている.派生語群の意味のつながりと広がりを味わってもらいたい.
・ affinity 「親近性」(←両端が接している状態)
・ confine 「制限する」
・ define 「限定する,定義する」
・ final 「最後の」
・ finance 「財政,財源」(←物事に始末を付けるための金の扱い方)
・ fine 「すぐれた」
・ fine 「罰金」(←物事に始末を付けるための金,訴訟を解決する手段としての金)
・ finery 「(過度な)装飾」
・ finesse 「技巧,優雅」
・ finial 「頂華;先端装飾」
・ finical 「凝り性の,気むずかしい」
・ finis 「終わり,末期」
・ finish 「終了する」
・ finite 「有限の」
・ infinite 「無限の」
・ infinitesimal 「極小の」
・ infinitive 「不定詞」(←人称によって限定されていない形態)
・ infinitude 「無限」
・ refine 「精錬する」
ここには,例えば definition, definitive などのさらなる派生語は含まれていない.語根から派生語や意味の広がりを味わうには,福島治先生の辞典がうってつけである.語源辞典:スペースアルクも有用.
ラテン語 sequi の派生語について述べた[2009-07-08-1]の記事も要参照.
・ 福島 治 編 『英語派生語語源辞典』 日本図書ライブ,1992年.
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