現代英語の口語で,標題のような表現がある.「そりゃまったく別の話だよ」という意味で,LDOCE5 によると nother, 'nother の見出しのもとに次のような記述がある.
a whole nother ... used humorously when emphasizing that something is completely different from what you have been talking about. It is a changed form of 'another whole':
- Texas is a whole nother country.
- That窶冱 a whole 'nother ball game.
another ( a(n) + other ) を分解して強調の whole を挟み込む際に,a whole other ではなく a whole nother と異分析 ( metanalysis ) して挟み込んだために生じた表現である(異分析の類例は[2009-05-03-1]を参照).Corpus of Contemporary American English (COCA) では結構な数の例が挙がったが,British National Corpus (BNC) では例がなかった.Merriam-Webster's Advanced Learner's English Dictionary では "US informal" のレーベルが付されていたし,アメリカ英語に多い表現といってよさそうだ.
さて,古い英語をみてみると,a whole nother のように間に形容詞が挟まっているタイプの nother の例こそいまだ見つけていないが,a + nother と異分析している例は早くも1300年頃から現れている.ane nothir sentence や an nother maner などの例を見ると,nother がすでに独立した語として認識されていたことが分かる.ただ,現代英語(米語?)の a whole nother という句が歴史的な異分析の例とどのような関係にあるのか,現段階の調査では不明である.
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