hellog〜英語史ブログ

#203. 1500--1900年における英語語彙の増加[lexicology][statistics][soed]

2009-11-16

 近代英語期の英語語彙の増加について,(連日だが)Hughes の調査を参考にしつつ紹介.Hughes は,Shorter Oxford English Dictionary (1933 ed.) に基づいて編集された Chronological English Dictionary を利用して,1500年から1900年のあいだに英語に加わった語を10年ごとに集計してグラフを作成した (404).
 以下のグラフは,Hughes のグラフを本ブログ用に改変したものである.Hughes にはグラフ作成のもとになる数値データは与えられていないので,グラフから目検討で数値を読み出し,それを頼りに再びグラフを作成した.したがって,ここに示されているものはあくまで参考までに.

Growth of English Vocabulary, 1500-1900, by Hughes


 グラフには二つのピークがある.一つ目のピークは約1550〜1630年の時期で,およそエリザベス朝の時代 ( Elizabethan Period ) を中心とする.二つ目のピークは約1790〜1880年の時期で,およそロマン主義の時代 ( Romantic Period ) に相当する.間にはさまれた王政復古期 ( Restoration Period ) と新古典主義時代 ( Augustan Period ) は比較的,保守的だったとわかる.1450〜1950年に加わった語彙の総数は6万語を超え,平均すると年に約120語ということになる.
 なお,Hughes によると,年単位でみると1598年(590語)と1611年(844語)がもっとも際だっているという.

 ・Hughes, G. A History of English Words. Oxford: Blackwell, 2000. 403--04.
 ・Finkenstaedt, Thomas, E. Leisi, and D. Wolf. eds. A Choronological English Dictionary. Heidelberg: Carl Winter, 1970.

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#616. 近代英語期の科学語彙の爆発[scientific_english][lexicology][oed][statistics]

2011-01-03

 ルネサンス以降,近代英語期には科学語彙が爆発的に増殖した.特に19世紀は科学の発展がめざましく,おびただしい科学用語が出現することとなった.これには,18世紀後半から博物学でリンネの二名法が用いられるようになったことも影響している ( see [2010-09-21-1] ) .
 科学の諸分野の発達とその語彙の増殖は連動していると考えられるので,OED で専門語彙の初出時期を調べてまとめれば,その分野の発展史の概略をつかむことができるのではないかと考えた.18世紀以前にすでに十分に発展していた分野もあるわけで,そのような分野では19世紀中の専門語彙の増殖は相対的に小さいはずである.そこで,18世紀以前に発展していたと分かっている解剖学と数学,19世紀に著しく発展したと分かっている化学と生物学に注目して,OED からそれぞれの分野からの専門用語を拾って整理してみた.
 拾い方は,それぞれ ADVANCED SEARCH の definitions 欄に "Anat.", "Math.", "Chem.", "Biol." が含まれる語という粗い条件指定によるものであり,検索結果リストも逐一チェックはしていない.各語は初出年によって世紀ごとに振り分け,"a1866", "c1629", "15.." などはそれぞれ19, 17, 16世紀へ振り分けた.また,初出年の記載のないものは考慮から外している.このように大雑把な調査なので,あくまで参考までに.以下が,結果の表とグラフである.(数値データはこのページのHTMLソースを参照.)

Development of Scientific Vocabulary in Four Scientific Areas

 chemistry と biology は19世紀に初出語彙のピークが来ているが,anatomy と math はそれぞれ17, 16世紀にピークがある.後者2分野は確かに19世紀にも山があるので,科学語彙が爆発した世紀という一般論は当てはまるが,個々の分野によって語彙増殖の傾向の異なることがわかる.
 今回はすでに発展史の概略がよく知られている4分野を取り上げ,OED によってその語彙増殖を確認したにすぎないが,他の専門分野で同様の調査を施してみるとおもしろい結果が出るかもしれない.関連する話題として,SOED を用いた「1500--1900年における英語語彙の増加」について,[2009-11-16-1]を参照.

 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of the English Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 2003. 87.

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