今井むつみ・秋田喜美(著)『言語の本質』(中公新書,2023年)の第3章「オノマトペは言語か」の最終節「まとめ」にて,言語を特徴づける10の性質を勘案した上で,オノマトペ (onomatopoeia) が高い言語性を示すことが結論づけられている.比較対照されているメディアは,一般語,口笛,咳払い,音真似,泣きである.89ページの表3-1「一般語,オノマトペ,非言語音の言語性」を引用する.
| 一般語 | オノマトペ | 口笛 | 咳払い | 音真似 | 泣き声 |
コミュニケーション機能 | ○ | ○ | ×/○ | ×/○ | | |
意味性 | ○ | ○ | ×/○ | ×/○ | × | × |
超越性 | ○ | ○ | × | × | | |
継承性 | ○ | ○ | ○ | ×/○ | | × |
習得可能性 | ○ | ○ | | | | |
生産性 | ○ | ○ | × | × | × | × |
経済性 | ○ | ○ | × | × | × | × |
離散性 | ○ | ○ | × | × | × | × |
恣意性 | ○ | △ | × | × | × | × |
二重性 | ○ | △ | × | × | × | × |
この表にしたがえば,オノマトペは「ほぼ言語」といってよい.少なくとも予想以上の言語性の高さであると認めてよいだろう.
上記の言語を特徴づける10の性質の各々については,ぜひ本書を熟読していただきたいが,以下にメモ程度に説明しておく.
・ コミュニケーション機能:発信の目的が意図を伝えることに特化していること
・ 意味性:特定の音形が特定の意味に結びつくこと
・ 超越性:イマ・ココ以外の物事に言及できること
・ 継承性:特定の伝統・文化のなかで世代を通じて教えられ,習得されること
・ 習得可能性:母語以外の言語をも学ぶことができること
・ 生産性:新たな発話を次々に作り出せること
・ 経済性:なるべく単純な形式でなるべく複雑な機能を果たそうとすること
・ 離散性:アナログではなくデジタルであること
・ 恣意性:形式と意味の間に必然性がないこと
・ 二重性:音それ自体は意味をなさないが,それを適切に組み合わせると意味をもつようになること
想像される通り,言語学者は言語の性質について考え続けてきた.言語を特徴づける性質群については,様々なバージョンが提案されてきた.例えば「#1327. ヒトの言語に共通する7つの性質」 (
[2012-12-14-1]),「#3770. 人間の言語の特徴,8点」 (
[2019-08-23-1]) などを参照されたい.
・ 今井 むつみ・秋田 喜美 『言語の本質 --- ことばはどう生まれ,進化したか』 中公新書,2023年.
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