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#5269. オノマトペは思ったよりも言語性が高かった[onomatopoeia][arbitrariness][productivity][double_articulation][linguistics][communication][iconicity]

2023-09-30

 今井むつみ・秋田喜美(著)『言語の本質』(中公新書,2023年)の第3章「オノマトペは言語か」の最終節「まとめ」にて,言語を特徴づける10の性質を勘案した上で,オノマトペ (onomatopoeia) が高い言語性を示すことが結論づけられている.比較対照されているメディアは,一般語,口笛,咳払い,音真似,泣きである.89ページの表3-1「一般語,オノマトペ,非言語音の言語性」を引用する.

 一般語オノマトペ口笛咳払い音真似泣き声
コミュニケーション機能×/○×/○  
意味性×/○×/○××
超越性××  
継承性×/○ ×
習得可能性    
生産性××××
経済性××××
離散性××××
恣意性××××
二重性××××


 この表にしたがえば,オノマトペは「ほぼ言語」といってよい.少なくとも予想以上の言語性の高さであると認めてよいだろう.
 上記の言語を特徴づける10の性質の各々については,ぜひ本書を熟読していただきたいが,以下にメモ程度に説明しておく.

 ・ コミュニケーション機能:発信の目的が意図を伝えることに特化していること
 ・ 意味性:特定の音形が特定の意味に結びつくこと
 ・ 超越性:イマ・ココ以外の物事に言及できること
 ・ 継承性:特定の伝統・文化のなかで世代を通じて教えられ,習得されること
 ・ 習得可能性:母語以外の言語をも学ぶことができること
 ・ 生産性:新たな発話を次々に作り出せること
 ・ 経済性:なるべく単純な形式でなるべく複雑な機能を果たそうとすること
 ・ 離散性:アナログではなくデジタルであること
 ・ 恣意性:形式と意味の間に必然性がないこと
 ・ 二重性:音それ自体は意味をなさないが,それを適切に組み合わせると意味をもつようになること

 想像される通り,言語学者は言語の性質について考え続けてきた.言語を特徴づける性質群については,様々なバージョンが提案されてきた.例えば「#1327. ヒトの言語に共通する7つの性質」 ([2012-12-14-1]),「#3770. 人間の言語の特徴,8点」 ([2019-08-23-1]) などを参照されたい.

 ・ 今井 むつみ・秋田 喜美 『言語の本質 --- ことばはどう生まれ,進化したか』 中公新書,2023年.

Referrer (Inside): [2023-10-03-1] [2023-10-02-1]

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