動物が利用する種々のコミュニケーション手段と対比して,ヒトの言語のもつ特徴は何か.多くの言語学者が,この言語学の本質的な問題に挑んできた.本ブログ記事としては,最近では,「#1281. 口笛言語」 ([2012-10-29-1]) で,Crystal の指摘する3点 (reproductiveness, double_articulation, displacement) を紹介した.
西江 (139--52) によれば,世界の言語に共通する性質は7つある.ヒト以外の動物のなかには,これらの性質のいくつかをもっているものもあるが,7つすべてを満たしているものはない.逆からみれば,この7つすべてを満たしているならば,そのコミュニケーション手段は言語であるといえる.
(1) 二重分節性(「#767. 言語の二重分節」 ([2011-06-03-1]) 及び double_articulation を参照)
(2) 生産性
(3) 恣意性 (arbitrariness を参照)
(4) 異空間・異時間伝達性
(5) 老若男女共通性(動物にはオスとメス,子と親とで伝え合いの方法が異なるのが普通)
(6) 分離性(必ずしも額面通りには表現しないという性質)
(7) 後天性・文化性
言語の媒介 (medium) ,言語の機能 (function_of_language), 言語の起源 (origin_of_language) のような一般言語学の諸問題を考察する際にも,これらの性質の理解が不可欠になろう.
・ 西江 雅之 『新「ことば」の課外授業』 白水社,2012年.
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