標題は breath-taking や man-made の類いの複合形容詞を指す.第2要素として現在分詞をとる「N + V-ing 型」と過去分詞をとる「N + V-ed 型」の2種類がある.名詞と分詞になっている動詞との統語意味論的関係にはどのようなものがあるのだろうか.大石 (100--01) を参照し,各々の型について例を挙げる.合わせて,OED より初出年を括弧内に付す.
[ N + V-ing 型 ]
(1) N が V の目的語となる例
breath-taking (1840), man-eating (1607), fact-finding (1833), habit-forming (1899), time-consuming (1600), English-speaking (1798); self-defeating (1812), self-sacrificing (1654), self-respecting (1597)
(2) N が表面化していない前置詞の目的語となる例(以下では関与する前置詞を補う)
ocean-going [across] (1854), fist-fighting [with] (1950), law-abiding [by] (1839)
[ N + V-ed 型 ]
(3) "V-ed by [at, in, with] N" とパラフレーズできる関係(以下では関与する前置詞を補う)
moth-eaten [by] (c1400), self-taught [by] (1586), man-made [by] (1845), home-made [at] (1547), country-bred [in] (1620), star-spangled [with] (1600)
例を眺めてみると,複合形容詞の要素となる名詞と動詞(分詞)の統語的関係は,緩く多様であることが分かる.換言すれば,複合形容詞は,統語的に展開されたフレーズと比べると,要素間の意味関係が明示的でないともいえよう.もちろん,そのような明示性を多少犠牲にしつつ形式としてのコンパクトさを獲得していることこそが,複合形容詞の存在意義なのだろうとは思う.
今回取り上げたタイプの複合形容詞の歴史的な発生に関しては,上記例の初出年を眺める限り,近代英語のものがほとんどである.より早い中英語期から用いられている類例はどれだけあるのだろうか,探してみたくなった.
・ 大石 強 『形態論』 開拓社,1988年.
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