子音や母音を音声学的に記述・参照する方法として,一般的に "voiceless bilabial plosive" 「無声両唇破裂音」 (= [p]) や "central open-mid unrounded" 「中舌半広円唇(母音)」 (= [ʌ]) などと各素性の名称を組み合わせるやり方が採用されているが,この方法自体に名前がつけられている.子音の場合は "the voice-place manner label" という順序で呼ばれるので「VPM ラベル」といい,母音の場合は "the backness-openness-(lip-)rounding label" という順序なので「BOR ラベル」という(三浦,p. 54--55).いくつか例を挙げてみよう.
・ [ŋ] = voiced velar nasal (有声軟口蓋鼻音)
・ [ç] = voicless palatal fricative (無声硬口蓋摩擦音)
・ [ɹ] = voiced postalveolar approximant (有声後部歯茎接近音)
・ [l] = voiced alveolar lateral approximant (有声歯茎側面接近音)
・ [i] = front close unrounded (前舌狭非円唇母音)
・ [ɯ] = back close unrounded (後舌狭非円唇母音)
・ [ɛ] = front open-mid unrounded (前舌半広非円唇母音)
・ [ɒ] = back open rounded (口舌広円唇母音)
VPM ラベルも BOR ラベルも,基本的な素性による基本的な呼称であり,音声学的にはさらに細分化された素性を参照した応用的な呼称があることに注意したい.子音と母音の音声学素性や音声表記については「#19. 母音四辺形」 ([2009-05-17-1]),「#1813. IPA の肺気流による子音の分類」 ([2014-04-14-1]),「#251. IPAのチャート」 ([2010-01-03-1]),「#669. 発音表記と英語史」 ([2011-02-25-1]) などを参照.
・ 三浦 弘 「第3章 子音」服部 義弘(編)『音声学』朝倉日英対照言語学シリーズ 2 朝倉書店,2012年.46--63頁.
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