hellog〜英語史ブログ

#3508. ソシュールの対立概念,3種[saussure][terminology][langue][diachrony]

2018-12-04

 構造主義言語学の父というべきソシュール (Ferdinand de Saussure; 1857--1913) は,言語(研究)に関する様々な対立概念を提示した.その中でもとりわけ重要な3種の対立について,表の形でまとめておきたい(高橋・西原の pp. 3--4 より).

(1) ラング (langue) とパロール (parole) の対立

ラングパロル
体系的 (systematic)非体系的 (not systematic)
同質的 (homogeneous)異質的 (heterogeneous)
規則支配的 (rule-governed)非規則支配的 (not rule-governed)
社会的 (social)個人的 (individual)
慣習的 (conventional)非慣習的 (not conventional)
不変的 (invariable)変異的 (variable)
無意識的 (unconscious)意識的 (conscious)


(2) 形式 (form) と実体 (substance) の対立

形式実体
体系 (system)無体系 (no system)
不連続的 (discrete)連続的 (continuous)
?????? (static)?????? (dynamic)


(3) 共時性 (synchrony) と通時性 (diachrony) の対立

共時性通時性
無歴史的 (ahistorical)歴史的 (historical)
?????? (internal)紊???? (external)
不変化的 (unchanging)変化的 (changing)
一定の (invariable)変わりやすい (variable)
共存的 (coexistent)継続的 (successive)


 ソシュールは,これらの対立を提示しながら,言語研究においては左列の諸側面を優先すべきだと考えた.つまり,ラング,形式,共時性を重視すべしと訴えたのである.
 (1) の対立については「#2202. langue と parole の対比」 ([2015-05-08-1]) を,(2) については「#1074. Hjelmslev の言理学」 ([2012-04-05-1]) を参照.(3) に関しては「#3326. 通時的説明と共時的説明」 ([2018-06-05-1]) に張ったリンク先の記事をどうぞ.諸対立から不思議と立ち現れる「#3264. Saussurian Paradox」 ([2018-04-04-1]) もおもしろい.

 ・ 高橋 潔・西原 哲雄 「序章 言語学とは何か」西原 哲雄(編)『言語学入門』朝倉日英対照言語学シリーズ 3 朝倉書店,2012年.1--8頁.

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