構造主義言語学の父というべきソシュール (Ferdinand de Saussure; 1857--1913) は,言語(研究)に関する様々な対立概念を提示した.その中でもとりわけ重要な3種の対立について,表の形でまとめておきたい(高橋・西原の pp. 3--4 より).
(1) ラング (langue) とパロール (parole) の対立
ラング | パロル |
体系的 (systematic) | 非体系的 (not systematic) |
同質的 (homogeneous) | 異質的 (heterogeneous) |
規則支配的 (rule-governed) | 非規則支配的 (not rule-governed) |
社会的 (social) | 個人的 (individual) |
慣習的 (conventional) | 非慣習的 (not conventional) |
不変的 (invariable) | 変異的 (variable) |
無意識的 (unconscious) | 意識的 (conscious) |
(2) 形式 (form) と実体 (substance) の対立
形式 | 実体 |
体系 (system) | 無体系 (no system) |
不連続的 (discrete) | 連続的 (continuous) |
?????? (static) | ?????? (dynamic) |
(3) 共時性 (synchrony) と通時性 (
diachrony) の対立
共時性 | 通時性 |
無歴史的 (ahistorical) | 歴史的 (historical) |
?????? (internal) | 紊???? (external) |
不変化的 (unchanging) | 変化的 (changing) |
一定の (invariable) | 変わりやすい (variable) |
共存的 (coexistent) | 継続的 (successive) |
ソシュールは,これらの対立を提示しながら,言語研究においては左列の諸側面を優先すべきだと考えた.つまり,ラング,形式,共時性を重視すべしと訴えたのである.
(1) の対立については「#2202. langue と parole の対比」 (
[2015-05-08-1]) を,(2) については「#1074. Hjelmslev の言理学」 (
[2012-04-05-1]) を参照.(3) に関しては「#3326. 通時的説明と共時的説明」 (
[2018-06-05-1]) に張ったリンク先の記事をどうぞ.諸対立から不思議と立ち現れる「#3264. Saussurian Paradox」 (
[2018-04-04-1]) もおもしろい.
・ 高橋 潔・西原 哲雄 「序章 言語学とは何か」西原 哲雄(編)『言語学入門』朝倉日英対照言語学シリーズ 3 朝倉書店,2012年.1--8頁.
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