hellog〜英語史ブログ

#3084. スペリングの歴史を知っておくと「慰め」られる[spelling][spelling_pronunciation_gap][review]

2017-10-06

 先日発行された日本中世英語英文学会の学会誌 SIMELL 32号に,新川清治氏による Does Spelling Matter? の書評が掲載された.私にとって,この著書の邦訳『スペリングの英語史』を上梓した矢先だったこと,また評者の新川氏が,2014年12月の英語のスペリングに関するシンポジウムで著者 Horobin 氏および私とともに議論したメンバーだったこともあり,書評をたいへん興味深く拝読した.(cf. 「#3079. 拙訳『スペリングの英語史』が出版されました」 ([2017-10-01-1]),「#2053. 日本中世英語英文学会第30回大会のシンポジウム "Does Spelling Matter in Pre-Standardised Middle English?" を終えて」 ([2014-12-10-1]).)
 「#3080. 『スペリングの英語史』の章ごとの概要」 ([2017-10-02-1]) で要約を示したが,新川氏の原著の要約は具体例も豊富でとても読みやすい.昨日の記事「#3083. 「英語のスペリングは大聖堂のようである」」 ([2017-10-05-1]) で取りあげた締めくくりの大聖堂の比喩については,喩えとして印象的だったからに違いない,新川氏も触れている.そして,書評の最後を次のように締めくくっている (165) .

以上,本書の内容を紹介してきたが,綴りに影響した様々な言語内外の要因を扱っているため,煩雑と思えるほどに情報量が多い。また,予備知識なしで読めるようにはなっているが,個々の記述を本当に理解しようと思うとかなり難しいと言える。しかし,分かったようなつもりで読み飛ばしても,一見,無意味・理不尽と思われる慣習にもそうなるに至った理由があることは分かる。どうせ覚えないといけない綴りである。不規則性の背後に長い歴史があることを知っているだけでも,いくらかの慰めになるのではないだろうか。


 確かに情報量は多く,消化不良を起こしそうなほどのスペリングのネタの宝庫.個別に理解するのが難しいのも事実.それでも,全体として「アハ!体験」が多く,現代のスペリングも結局は歴史の産物だったのだなあと何となく納得しつつ,慰められつつ,再び英語(スペリング)学習に戻っていけるような著書だと思う.

 ・ 新川 清治 「書評:Simon Horobin, Does Spelling Matter? Oxford: Oxford University Press, 2013. x+270pp.」 Studies in Medieval English Language and Literature</i> 32 (2017): 153--65.
 ・ Horobin, Simon.
Does Spelling Matter?'' Oxford: OUP, 2013.
 ・ サイモン・ホロビン(著),堀田 隆一(訳) 『スペリングの英語史』 早川書房,2017年.

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