「#496. ウラル語族」 ([2010-09-05-1]) と合わせてウラル・アルタイ大語族の仮説を構成するアルタイ語族 (Altaic) について,バーナード・コムリー他 (46--47) より紹介する.アルタイ語族は,実証されてはいないものの朝鮮語や日本語が所属するとも提案されてきた重要な語族である.コムリーの与えているアルタイ語系統図を見てみよう.
この語族の故地はアルタイ山脈付近(下図参照)にあるとされ,西のチュルク語派 (Turkic),中央のモンゴル語派 (Mongolian),東のツングース語派 (Tungus) が区分される.その後,担い手である遊牧民によって拡散し,現在ではトルコからシベリア北東部にいたる大草原地帯に広く分布する.
アルタイ諸語のあいだの系統関係は,語彙よりも文法上の類似に基づくものが多く,研究者間で必ずしも意見の一致を見ているわけではない.共通する特徴として指摘されるのは,語順が SOV であること,膠着語であること,母音調和をもっていることが挙げられるが,後者2点についてはウラル語族の特徴とも一致する.日本語の所属が提案されているのも,これらの特徴ゆえである.主流派の見解によれば,日本語はアルタイ語族とオーストロネシア語族の混成語とも言われるが,証明は難しい.
満州語は,中国最後の皇帝の言語であり,清王朝 (1644--1911) のもとで優遇されたが,現在では大多数の話者が中国語へ言語交替したため,消滅の危機に瀕している.
アルタイ語族の各言語の詳細については,Ethnologue report for Altaic を参照.
・ バーナード・コムリー,スティーヴン・マシューズ,マリア・ポリンスキー 編,片田 房 訳 『新訂世界言語文化図鑑』 東洋書林,2005年.
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