hellog〜英語史ブログ

#1455. gematria[kotodama][alphabet][word_play][hebrew]

2013-04-21

 gematria (ゲマトリア)とは,ユダヤ教の密教的な信仰であるカバラ (Kabbalah) における文字転換法,暗号解読法である.ゲマトリアでは,ヘブライ語のアルファベットの各文字は数値をもっており,その組み合わせである語や文も一定の数値をもっているとされる.数の象徴的な意味を重視するカバラでは,同じ値をもつ語や文どうしは互いに深遠な宗教的意味を有していると考えられ,その解釈によって宇宙と人間の秘密を理解しようと試みる.例えば,大天使メタトロンと全能の神シャダイはともに314の数値をもち,密接な関係があるとされる.
 カバラ主義は中世の西洋魔術や錬金術に大きな影響を与え,gematria もまたユダヤ教にとどまらずキリスト教へ広がり,やがては英語の26文字のアルファベットへも応用された.Crystal (The English Language 121--22) および Crystal (The Cambridge Encyclopedia of Language 59) に挙げられている例を見てみよう.英語ではアルファベットの各文字に1から26の数値が順に割り振られる.manEden はともに28であり,BibleHoly Writ はともに100である.Mount Sinaithe laws of God は135であり,Jesus, Messiah, Son God, Cross, Gospel はいずれも74である.驚喜する信者がいたとしても不思議はない.
 gematria は,より世俗的な言葉遊びとして楽しむこともできる.以下の例もおもしろい.

 ・ tongue = lexicon = 82
 ・ etymology = Indo-European = West Germanic = 137
 ・ all + vote = democracy
 ・ arm + bend = elbow
 ・ bad + language = profane
 ・ book + loan = library
 ・ good + deeds = scout
 ・ hide + listen = eavesdrop
 ・ keep + off = grass
 ・ king + chair = throne
 ・ not + same = different

 信仰としての gematria は西洋では18世紀までに衰退したが,今でも占いとして利用する人などはいるかもしれない.gematria は数値を介するものだが,言葉に何らかの隠れた意味があり,そこに神の意志が宿っているという考え方は,古今東西に存在する.日本にも言霊思想などと呼ばれるものがある.なお,gematria の語源は geometry (ギリシャ語 geometría)と同じとされる.
 ウェブ上を探したら,やはりありました Gematria Calculator が.

 ・ Crystal, David. The English Language. 2nd ed. London: Penguin, 2002.
 ・ Crystal, David. The Cambridge Encyclopedia of Language. 2nd ed. Cambridge: CUP, 1997.

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