慶應義塾大学医学部(日吉)
慶應義塾大学医学部のキャンパスは、ここ日吉と都内信濃町キャンパスの、2つに分かれています。医学部に入学した諸君は、まずは日吉の広いキャンパスでの学生生活を楽しんで欲しいと思います。医学部はその教育活動の一環として大学病院を持ちます。どの大学でも病院は通院する患者さんのため交通の便利な場所に位置し、狭いキャンパスにあることが普通で、あまり大学らしく見えません。慶応義塾医学部の場合も例外ではありません。しかし、慶應義塾に入学した諸君は、この広い日吉キャンパスで医学部生としての第一歩を踏み出すことが出来るのは仕合せです。
ここで何を学ぶべきか。それは、高等学校までの学習との違いです。大学での授業は中学、高校までのそれと違って、学生に対してあまり親切ではありません。授業科目はたくさんあります(医学部では他学部よりはるかに多い)。それらを受講するには、自分でそのための申請をし、受講後は試験を受け、その科目を学んだ証明を受ける必要があります。大学では自分で選択し受講し、試験を受けて単位をとる科目が非常に多いのです。医学部の場合、取得する科目がかなり決まっていて、他学部に比べ自由度は少ないのですが、それでも取得申請を忘れると、毎日授業にきちんと出席していても、試験を受けることさえ出来ません。忘れたらどうしたらよいか。それは簡単です。来年、もう一度、申請し受講すればよいのです。
どうして、大学はそんなに不親切なのでしょう。それは、大学は諸君をもう社会人の一人としてみなしているからです。選挙権をもつ年齢には少し早いのですが、諸君の教育を担当する教員、さらに諸々の大学事務を担当する職員が諸君に接する態度は社会人への態度と変わりありません。社会人は道路交通法を知らなかったからといって、交通違反を許されることはありません。大学生は大学での生活、学習のルールを理解していることが前提になっています。大学での講義もあまり親切ではありません。講義の進度は非常に速く、高校のように教科書を順序よく、どの頁も漏らさず進めていくことはまれです。これは教員の手抜きではありません。学習すべき内容が多いことも理由のひとつですが、それより大きいのは、このような教育の課程で、教員に教えてもらうのではなく自分で勉強していく態度を身につけて欲しいからです。そうでなければ、厖大な知識のうえに立って、急速に進歩している医学に追いついていくことはできません。
このようなちょっと厳しい要求に対して、医学部進学という目的を持って入学した諸君は、多分答えてくれるでしょう。もし、すこし自信のない人がいるのなら、日吉での教育を通じてその方向をはっきり見出してください。医学はさまざまな自然科学の成果が集大成されている科学領域であることを考えれば、数学、物理などを学ぶ必要性は自明でしょう。また、生物のなかでもっとも知的活動レベルの高いヒトという動物を直接、学習の対象とするのですから、語学、歴史のような人間の文化活動に関わる科目を学習する理由も理解できるでしょう。日吉ではこれらをきちんと学んでください。きちんとした基礎の上に立って、“未来を先導する”医師、医学者が作り出されるのです。
医学部日吉主任 長井 孝紀
(2009.9.25記)
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