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#6181. 2重比較級というべき語 --- furthermore, nethermore[comparison][double_comparative][word_formation][suffix][ormulum]

2026-03-30

 英語史で「2重比較級」 (double_comparative) というと,Shakespeare を中心とする初期近代英語期の more worseworser という余剰的な比較表現の話題が頭に浮かぶ.比較級の作り方として形式的な余剰性があり,論理的・規範的な観点からは現代ではダメ出しされるので,話題として取り上げられやすいのだろう.
 同じ「2重比較級」の枠にはまるものの,あまり顧みられないのが,今回扱う furthermoreuttermore のような語である.あくまで1語であり,そのなかに比較級接尾辞の -er と -more の両方が共存しているという例だ.OED で調べると,歴史的には次のような例が挙がってくる.

backermore, downermore, farthermore, furthermore, hindermore, hithermore, innermore, lattermore, lowermore, northermore, outermore, rathermore, uppermore, uttermore


 現代でもある程度使われているものは furthermore, nethermore に限られるが,歴史的には上記のようにもっとあった.これらの多くは後期中英語から初期中英語にかけて造語されており,意味的には空間や時間に関するポジションを示すという共通点がある.全体として3音節となり,重厚な「比較級」感が出るという特徴がある.現代では -more 接尾辞はもはや生産的ではないが,英会話などで比較級の気持ちが強すぎて,思わず more better と口走ってしまう感覚に通じるように思われる.余剰である,無駄であるなどといって簡単に捨て去ることもできない,気になる語群である.
 ちなみにこれらのなかで最も古いものは,現代でも現役の furthermore で,初期中英語に次のように初出している.

c1175 Þe sterrne comm rihht till þatt hus... & flæh itt ta na forrþerrmar. (Ormulum (Burchfield transcript) l. 7338)

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