複数のコーパスを用いたキーワード分析は,私も何度か行なったことがある (cf. keyword) .特定のコーパスに特徴的に現われるキーワードを,別の一般的なコーパスとの対比によって統計的に抜き出してくる手法で,うまくいくと言語文化的な観点からおもしろい結果が出る.
今回は,Polzenhagen and Wolf の論考を読んでいて,ICE (International Corpus of English) が提供するカメルーン英語のコーパスからキーワードを抜き出した調査が紹介されているのを見つけたので,それを紹介したい.対比のための参照コーパスとして,イギリス英語の FLOB とアメリカ英語の FROWN が用いられている.
さて,調査の結果だが,カメルーン英語のキーワードとして以下の単語群が上位に浮かび上がってきたという (161) .
・ community
・ communal
・ family
・ relative
・ kin / kinship / kinsman / kinspeople
・ brotherhood
・ marriage
・ marry
・ marital
・ husband
・ wife
・ parent / parental / parenting
・ maternity / maternal
・ Birth
・ child / childhood / childless
・ Offspring
意味の場として共通項をくくり出せば「親族」と「共同体」といったところだろうか.カメルーン社会の顕点が明らかになっているといってよいだろう.民族誌や認知人類学にも洞察を与えてくれる興味深い結果といえる.ただし,対比のための参照ポイントが英米変種(文化)であること,つまり結果が相対的なものであることは,常に意識しておく必要があるだろう.
・ Polzenhagen, Frank and Hans-Georg Wolf, "World Englishes and Cognitive Linguistics." Chapter 8 of The Oxford Handbook of World Englishes. Ed. by Markku Filppula, Juhani Klemola, and Devyani Sharma. New York: OUP, 2017. 147--72.
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