昨日の「英語の語源が身につくラジオ」にて,「昔の英語では主語が必須じゃなかった!」を放送しました.古英語や中英語では主語が現われない文があり得たという衝撃の話題を取り上げましたが,実は現代英語でも口語や定型文句においては,文法や文脈から補うことのできる自明な主語が省略されることは,少なくありません.Quirk (§12.47)より,人称別に主語が省略されるパターンを示しておきます.
[1人称主語の省略]
・ (I) Beg your pardon.
・ (I) Told you so.
・ (I) Wonder what they're doing.
・ (I) Hope he's there.
・ (I) Don't know what to say.
・ (I) Think I'll go now.
[2人称主語の省略]
・ (You) Got back all right?
・ (You) Had a good time, did you?
・ (You) Want a drink?
・ (You) Want a drink, do you?
[3人称主語の省略]
・ (He/She) Doesn't look too well.
・ (He/She/They) Can't play at all.
・ (It) Serves you right.
・ (It) Looks like rain.
・ (It) Doesn't matter.
・ (It) Must be hot in Panama.
・ (It) Seems full.
・ (It) Makes too much noise.
・ (It) Sounds fine to me.
・ (It) Won't be any use.
・ (There) Ought to be some coffee in the pot.
・ (There) Must be somebody waiting for you.
・ (There) May be some children outside.
・ (There) Appears to be a big crowd in the hall.
・ (There) Won't be anything left for supper.
思ったより多種多様な主語省略があるなあ,という印象ではないでしょうか.2人称では疑問文が基本であり,3人称では it や there の例が多いなど,一定の傾向も確認されます.
現代英語では原則として主語が必須である,ということは英語学習・教育でも金科玉条とされています.それでも,このように主語省略の事例は確かにありますし,英語史的にも主語省略は決して稀ではなかったということは,改めてここで述べておきたいと思います.
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