語源を一にする形態の異なる2つの語を2重語 ( doublet ) と呼ぶ.これまでも2重語や3重語については多くの記事で話題にしてきた ( see doublet and triplet ) .英語の語彙の豊富さを考えると,最大で何重語まであり得るのかと思っていたが,Bryson (67) で6重語 ( sextuplet ) が存在するという記述をみつけた.
古代ギリシア語 discos からラテン語に入った discus 「(古代ギリシアの競技用の)円盤」を語根とする以下の英単語群である.
Word | Meaning | First year by OED |
dish | 「大皿」 | OE |
dais | 「高座,上段」 | a1259 |
desk | 「机」 | c1386 |
discus | 「(古代ギリシアの競技用の)円盤」 | 1656 |
disk | 「円盤;(天体の)平円形;(記憶媒体の)ディスク」 | 1664 |
disc | 主として disk の英綴り | C18? |
disc は
disk の異綴りであり別の語とみなすことができるかどうか怪しいが,これを差し引いても堂々の5重語 ( quintuplet ) である.
dais はフランス語を経由して変形した形態が英語に入ったものである.
desk は,プロヴァンス語
desca 「かご」あるいはイタリア語
desco 「台,机」に基づく中世ラテン語の形態が英語に入ったもので,
discus からの距離は遠いが,究極的には同根と考えられる.
古英語以前の借用と考えられる
dish から近代英語期の
disk,
disc まで,よくもこれほど長い期間にわたってラテン語
discus にお世話になってきたものだ.
Bryson は他にも,4重語 ( quadruplet ) の例としてラテン語
gentilis にさかのぼる
jaunty 「陽気な,軽快な」,
gentle 「優しい」,
gentile 「非ユダヤの」,
genteel 「上品ぶった」を挙げている.
・ Bryson, Bill.
Mother Tongue: The Story of the English Language. London: Penguin, 1990.
[
|
固定リンク
|
印刷用ページ
]