標題に /ɪ/ の発音記号を表示できない仕様なので,弛緩前舌高母音 ( lax front-high vowel ) などと調音音声学的に表現したが,要するに it に含まれる短母音のことである.
ゼミなどで現代英語の発音と綴字の乖離の問題を論じる際に,頭の体操として「○○という発音に対応する綴字を,単語の具体例を出しながら複数種類挙げよ」とか,逆に「○○という綴字に対応する発音を,単語の具体例を出しながら複数種類挙げよ」という演習問題を皆で解く機会がある.先日のゼミで「 /ɪ/ に対応する綴字を,単語の具体例を出しながら複数種類挙げよ」を試してみた.集合知の効果が見事に発揮され,一人ではなかなか思いつかない意外な例も挙げられたので,すかさずメモを取った.以下に具体例を追加しながら再現.
・ <i>: him, it, thick
・ <y>: hymn, sympathy, yclept
・ <e>: English, recognize, women ( see [2009-12-12-1] )
・ <u>: busy, business ( see [2010-11-10-1] )
・ <a>: acknowledge (AmE), spinach,
・ <ee>: been
・ <ie>: sieve
・ <ui>: build
意外性という意味での傑作は,学生の一人が挙げた forehead の <ea> である ( see [2010-01-12-1], [2009-11-24-1] ) .場合によっては <ehea> の部分を切り出し,これが /ɪ/ に対応すると主張することも可能かもしれない(ただしこの種のゲームの暗黙のルールとして,母音字が子音に対応する,あるいは子音字が母音に対応するという組み合わせは違反とされているように思われる).この手の 偽装合成語 ( disguised compound; see [2010-01-12-1] ) や,それに類する英語地名・人名などを漁れば,とんでもない解答が他にあるかもしれない.
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