hellog〜英語史ブログ

#237. 英語史の時代区分の歴史 (6)[periodisation]

2009-12-20

 [2009-12-19-1]で見たように,Sweet の Old English, Middle English, Modern English の三区分は,現在に至るまで英語史に強い影響を及ぼしている.Sweet はこの三区分をさらに細分化した八区分のバージョンをも唱えている.後者は,各時代を代表する作家名あるいは作品名を添えているのが特徴である.

Period Prototype Range
Early Old English Alfred 700--900
Late Old English Ælfric 900--1100
Transition Old English Laȝamon 1100--1200
Early Middle English Ancrene Riwle 1200--1300
Late Middle English Chaucer 1300--1400
Transition Middle English Caxton 1400--1500
Early Modern English Shakespeare 1500--1650
Late Modern English no prototype 1650--


 この八区分の特徴は,Old English の最後期,Middle English の最後期として,"Transition" という時期を設定していることである.これは,言語変化は連続体であり,ある段階の言語を明確に一つの時代区分へと落とし込むことは本質的に不可能であるとの Sweet の認識を示唆している.
 とはいえ,この八区分がもとの三区分を基礎にしていることは明らかであり,事実上 "triadomany" の伝統に沿っているとみなして差し支えないだろう.下位レベルで Early, Late, Transition とさらに三分割していることは,むしろ "triadomany" を強化しているとすら言えるかもしれない.

 ・Lass, Roger. "Language Periodization and the Concept of 'middle'." Placing Middle English in Context. Eds. Irma Taavitsainen, Terttu Nevalainen, Päivi Pahta and Matti Rissanen. Berlin and New York: Mouton de Gruyter, 7--41. esp. Page 16.

Referrer (Inside): [2012-06-13-1] [2011-04-19-1]

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