イギリスの都市 Birmingham の発音は /ˈbəːmɪŋəm/ である.イギリス地名によくあることだが,長い歴史のなかで発音が短化・弱化してきた結果である.この地名の場合 -ham の頭子音が脱落してしまっている.
一方,同名のアメリカの都市では,この h が保存されており /ˈbɚːmɪŋhæm/ と発音される./h/ が保存されているというよりは,むしろ綴字発音 (spelling_pronunciation) として復活されたというほうが適切かもしれない.
そして,イギリスの都市については,もう1つ伝統的で大衆的な発音があるという.それは /ˈbrʌməʤm̩/ というものである.この話題とその周辺の話題について,Clark (476) が次のように述べている.
Further complications arise from a sporadic palatalisation and assibilation of -ing(-) > [ɪnʤ] that affects suffix and infix alike: e.g. Lockinge, Wantage < OE Waneting (also originally a stream-name --- PN Berks.: 17--18, 481--2), and also the traditional, now vulgar, /brʌməʤm̩/ for Birmingham (PN Warks.: 34--6). Explanations have ranged from variant development of gen. pl. -inga- . . . to fossilised survival of a PrOE locative in *ingi, assumed to have dominated development of the names in question in the way that dative forms not uncommonly do . . . .
この説が正しいとすると,くだんの -ing の起源となる屈折語尾母音の小さな違いによって,公式な発音 /ˈbəːmɪŋəm/ と大衆的な発音 /ˈbrʌməʤm̩/ が分かれてしまったことになる.そして,この異形態の揺れが,場合によっては1500年ほどの歴史を有するかもしれない,ということになる.
・ Clark, Cecily. "Onomastics." The Cambridge History of the English Language. Vol. 1. Ed. Richard M. Hogg. Cambridge: CUP, 1992. 452--89.
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