先日7月1日,2023年度慶應義塾大学文学部公開講座「越境する文学部」の第3弾として「本と文字は時空を超える」と題する講座が開催されました.高校生や関係者を含め100名ほどが参加するなか,図書館・情報学専攻の安形麻理教授と私,堀田隆一(英米文学専攻)が,講演と対談を行ないました.質疑応答を含め2時間ほどの会でしたが,私自身も多くの学びを得ました.
この講座を終えた後,先日,安形先生と同じテーマで Voicy 対談を実施しました.講座で議論した内容の一部とはなりますが,講座のエッセンスは伝わるのではないかと思います.「#768. 本と文字は時空を超える --- 安形麻理先生との対談」です.全体で27分ほどの長さです.お時間のあるときにお聴きください.
講座の講演では,すぐに飛んで消えてしまう話し言葉とは異なり,文字や本は書き言葉として時間を超えて生き残ることができ,また移動させることによって空間をも超えることができると強調しました.まず私が「文字は時空を超える」ことをお話しし,その後で安形先生がそれを受ける形で「本は時空を超える」ことを取り上げました.
しかし,よく考えてみれば,文字も本も放っておいて自動的に時空を超えて残るわけではありません.往々にして,人が残すべきものを選んだ結果,それが残っているにすぎないのです.文字・本は時空を超えるポテンシャルこそ備えていますが,そのポテンシャルが実現するかどうかはまた別の問題です.書き言葉に付された情報は,黙っていて時空を超えてきたわけではなく,人が残そうとしたからこそ残ったのです.講座でも上記の Voicy 配信でも,この辺りが話題の中心となっています.
文字に関する話題としては,安形先生が翻訳された『カリグラフィーのすべて --- 西洋装飾写本の伝統と美』(2022年)もご紹介しておきます.ぜひどうぞ!
・ パトリシア・ラヴェット(著),髙宮利行(監修),安形麻理(訳) 『カリグラフィーのすべて --- 西洋装飾写本の伝統と美』 グラフィック社,2022年.
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