-o で終わる加算名詞から規則的な複数形を作る場合に,綴字上 -s のみを付す pianos タイプと,-es とする potatoes タイプが区別される.
LGSWE (285) は,LGSWE Corpus によって両タイプの分布を調査した.両語尾の間で揺れを示すものもあるので,80%以上の生起率を基準にして,いずれかのタイプかに割り振ったリストである.別途『徹底例解ロイヤル英文法』から補った類例( * を付した)も含めつつ,以下に列挙しよう.
・ pianos タイプ: *autos, avocados, casinos, commandos, concertos, discos, *dynamos, embryos, Eskimos, *ghettos, jumbos, kilos, memos, pesos, photos, pianos, portfolios, radios, scenarios, shampoos, solos, stereos, studios, taboos, tacos, tattoos, *torsos, trios, twos, videos, weirdos, zeros, zoos
・ potatoes タイプ: buffaloes, cargoes, echoes, heroes, mangoes, mosquitoes, mottoes, negroes, potatoes, tomatoes, tornadoes, torpedoes, vetoes, volcanoes
一般論をいえば,-s のみを付す pianos タイプが原則である.特に,略語に由来する -o 語や最近の新語として加わった -o 語は -s で複数形を作るのがデフォルトである.また,語末が「母音字+ o」となる場合にも,綴字配列の都合と思われるが,-s のみを付けるのが規則である (e.g. bamboos, cameos, cuckoos, curios, folios, radios, studios, trios) .
一方,potatoes タイプはどちらかといえば「例外」の側になるわけだが,このタイプには英語化した度合いの比較的強い,日常語が含まれるので注意を要する.
また,-s と -es の間で揺れを示す名詞も少なくない.『徹底例解ロイヤル英文法』では,例として banjo(e)s, buffalo(e)s, cargo(e)s, fresco(e)s, ghetto(e)s, grotto(e)s, halo(e)s, mango(e)s, manifesto(e)s, mosquito(e)s, motto(e)s, tornado(e)s, volcano(e)s, zero(e)s が挙げられている.先に挙げたリストと重複する単語もあることから,-o 語の複数形をもっと細かく調査すれば,実際にはさらに広範な揺れが観察されるのかもしれない.
なお,この話題と関連して,単数形 potato の綴りを potatoe と誤って覚えていたアメリカ元副大統領 Dan Quayle のスキャンダル,通称「potato 事件」について,Horobin (2--3) あるいはその拙訳 (16--17) を参照.1文字のスペリング・ミス(だけではないが)で,政治生命が断たれることもあるという驚くべき事例である.pianos か potatoes かという問題は決して侮れない.
・ Biber, Douglas, Stig Johansson, Geoffrey Leech, Susan Conrad, and Edward Finegan. Longman Grammar of Spoken and Written English. Harlow: Pearson Education, 1999.
・ 綿貫 陽(改訂・著);宮川幸久, 須貝猛敏, 高松尚弘(共著) 『徹底例解ロイヤル英文法』 旺文社,2000年.
・ Horobin, Simon. Does Spelling Matter? Oxford: OUP, 2013.
・ サイモン・ホロビン(著),堀田 隆一(訳) 『スペリングの英語史』 早川書房,2017年.
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